東京地裁は、2015年10月2日、事業を譲り受けた会社が、譲渡会社の略称を商号の主たる部分に使用し、かつ、譲渡会社の使用していた標章(商標法 2 条 1 項参照)を続用していた事例において、当該譲受会社に対して会社法 22 条 1 項(商号続用責任)が類推適用される旨の判決を言い渡しました。
会社法 22 条 1 項は、事業譲渡に際して商号を続用した譲受会社に譲渡会社の債務を弁済する責任を負わせる規定ですが、商号が続用されているか否かは比較的厳格に判断される傾向にあり、本件においても譲渡会社の略称を譲受会社の商号として使用していたものの商号の続用は否定されていました。しかし、東京地裁は、譲受会社が譲渡会社の標章を続用していたことを主な理由として会社法22条1項の類推適用を認めました。本件では、譲渡会社の標章を譲受会社が従業員の名刺やウェブサイト等で表示して使用していたことから、譲渡会社の略称を商号の主たる部分に使用していたことと相まって、譲渡会社が存続しているような外観を作出したとして、会社法 22 条 1 項の類推適用が認められたものです。
従前から、事業譲渡に際して商号ではなく屋号を続用していた事例において会社法22 条 1 項の類推適用が認められた最高裁判決はありましたが、本裁判例は、標章を続用していた事例において会社法 22 条 1 項の類推適用を認めたものとして、実務上も参考になると思われます。
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文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2016年2月号 Vol.26より転載