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【M&Aと人事戦略】ポストM&Aの人事制度統合

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報酬制度

M&A後に報酬体系や報酬水準についても統合していきます。同じ国にあるのにそれらが異なるというのでは、社員の納得が得られません。ただし国境を越えての単純な比較は意味がありません。報酬体系や報酬水準は各国の法律と労働需給の影響を強く受けるので、国ごとに決めるという方法が簡便です。

もし、全世界の拠点の報酬水準だけでも統一した方針を導入したいという場合は、外資系コンサルティング会社が提供しているジョブサイズを測定して報酬水準を決めるシステムを購入する方法もあります。

ただし、優先度の点では報酬体系や報酬水準をそろえることよりも、国境または組織の枠を越えて社員を異動させる場合の報酬制度を準備しておく方が先決です。これについてはまた別の回に改めて説明したいと思います。

日本企業の人事制度の特殊性

最後に海外子会社にはそのまま展開することが難しい、日本の特殊な人事制度や習慣をあげておきます。例えば昇格要件としての滞留年数、役職定年、複線型人事制度などは、新卒採用を基盤とする集団管理原則によるもので日本的な制度です。

広範で頻繁なジョブローテーション(職種転換)も、転職するのが普通で個人の専門性や即戦力をベースに個別に処遇を決める慣行のある国では理解されにくいでしょう。部門や職種を問わず評価項目を統一するのも日本的です。部門や職種によっては読み替えなければ適用できないような曖昧な評価項目はNGです。

日本的制度の押しつけは禁物(Photo by photoB)

総合職/一般職、正社員/準社員といった身分(属性)による管理区分も、同一労働同一賃金の考えが普及し職務内容をベースに処遇が決まる海外では奇異に映ると思われます。

このような、日本では一般的だが、海外には適合しない制度・習慣の導入には慎重であるべきです。あえて導入する場合には、背景にある考え方を丁寧に説明する必要があります。

文:オフィス・グローバルナビゲーター代表 森 範子

森 範子

銀行系シンクタンク、外資系コンサルティング会社、日系メーカーの人事部長を経て、現在、オフィス・グローバルナビゲーター代表。海外人事に関するコンサルティングを行う。
論文等
・銀行型企業再生の死角と真の企業価値向上(2008年)
・M&Aの組織・人材デューデリジェンスと"人財"価値向上策(07年)
・「内部統制」で求められる人事部門の役割--「J-SOX」の基礎知識と具体的な対応策(07年)  
・Viewpoint 企業再編を巡る人事上の課題--合併等に伴う人事問題チェックポイント(02年) 


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