2016年4 月13日、厚生労働省の「組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」が報告書を公表しました。同報告書では、会社分割事業譲渡等の組織の変動の場面における労働者保護の政策に関する議論・検討の結果が報告されています。

 具体的には、会社分割については、会社分割に伴う労働関係の承継等に関する法律(「承継法」)等により、すでに労働者保護のために必要な一定の手続等が定められているものの、裁判例の蓄積等も踏まえ、①承継法上の主従事労働者の判断基準である「事業」の考え方を明らかにすること、②5 条協議(労働者との個別協議)の対象に承継される不従事労働者(承継事業に従事していない労働者)を加えること、③転籍合意により労働契約を移転する場合であっても、承継法上の手続が省略できないこと等を周知することや、労働者への通知事項に会社分割による労働条件の承継に関する事項を含めること等が提案されています。また、事業譲渡については、労働契約の承継に関して個別の労働者の同意が必要であること等から、これまで会社分割における承継法のような固有の法的措置は講じられていなかったところ、労働者の個別同意の実質性を担保し、労使間のコミュニケーションを促進するため、①労働契約の承継には個別の同意が必要であること、②不同意のみを理由として解雇することができないこと等の留意事項を周知することが提案されています。

 厚生労働省は、同報告書を踏まえ、承継法に基づく省令や告示の改正、事業譲渡に係る新たな指針の策定等の実施を予定しているとのことです。会社分割事業譲渡を伴う組織再編、M&Aの実務に影響が及ぶことが予想され、今後も注視していく必要があると思われます。


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文:森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2016年5月号 Vol.29より転載