日本企業が海外企業を買収するアウトバウンド型のM&Aは、円安になった今も活発だ。しかし、多額の投資をして買収したにもかかわらず、PMI(Post Merger Integration、買収後の統合プロセス)が思うように進まず、業績面で苦戦する日本企業は多い。

日本企業がグローバル企業に脱皮してM&Aを成功させるには何が必要なのか。日系や外資系企業のM&Aに関わる組織・人事面の支援の分野で、十数年にわたる豊富な経験を有するマーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、鳥居弘也氏が語る、M&Aを成功に導く組織・人事の考え方を短期集中連載する。

グローバル企業への成長は
ステップ・バイ・ステップで

―― 日本企業の海外M&Aが盛んですが、海外企業買収によって、
   日本企業はグローバル企業化しているのでしょうか。

 私たちは以前から、日本企業のグローバル企業化については、下図のような仮説モデルを考えてきました。横軸を内部資源に向けた組織・人事改革と外部資源に向けたM&A、縦軸を対象資源の所在である国内と海外に分けて、4つの象限を想定し、日本企業のグローバル化の成長ステージを説明したものです。

このモデルを作った4年前、右下の国内とM&Aの象限にある「国内経営統合」が盛んに行われていました。企業側は、その狙いについて、国内市場縮小への備えとともに、海外事業買収のための資本力向上を挙げていました。

その言葉通り、海外M&Aの市場規模は国内経営統合を上回るようになり、多くの企業が右上の「海外事業買収」の段階に入りました。

■日本企業のグローバル企業化モデル仮説

―― しかし、買収した海外事業会社を
うまくコントロールできない例も目立ちます。

 買収して傘下にぶら下げるだけでは足りません。そこで、株主としてガバナンスをきかせる「海外事業ガバナンス強化」(左上)の段階が必要になります。

我々が、その次に来ると予想したのは「国内事業・組織人事再構築」の段階です。売り上げで国内をしのぐ規模になった海外事業の経営者から「なぜ、日本だけが経営管理のKPIを公開しないのか」、「グローバルの収益配分を説明して欲しい」と突き上げられれば、国内事業・経営者のガバナンス、国内の組織人事も見直しを迫られるはずだからです。

これも、3年ほど前から現実になり、当社が支援する自動車、電機、製薬等の大手企業は「国内のグローバル化」とも言うべき圧力を受け、グローバルスタンダードに沿った組織人事制度改革を進めています。

 そして、今、まさに起きつつあるのが「国内・海外一体の事業・機能の最適化」の段階です。これまで連絡役に過ぎなかった本社派遣の社員も、海外でビジネス能力を身に付けることを求められるようになっています。

グローバルにサプライチェーンを展開する先進企業は、開発・設計、部品調達、組み立て、販売を最適地で行うため、常に配置を見直し、国内外一体の最適化に向けて、人・組織の均質化を進めています。トップ企業群は最終段階の「グローバル経営体制の確立」にあと一歩のところまで来ていると言えるでしょう。

―― 一方で、「海外事業買収」「海外事業ガバナンス強化」「国内事業・組織人事再構築」の段階で、足踏みして、なかなかグローバル化を進められない日本企業もあるようです。

 今後は、自社がどのステージにいるのかを認識した上で、人事組織の課題に取り組む必要があります。経営者も、ステージを一段ずつクリアしながら、グローバルな事業再編のために必要な能力を身に付けることを意識すべきでしょう。

注意すべきなのは、基本的にはステージを飛ばすことはできないということです。必要な経験を積まないうちに、一足飛びにグローバル化を進めようとしてもうまくいきません。ただ、ステージを飛ばすことはできませんが、外部人材の採用やコンサルタントの活用により、ステージを登るスピードを加速することはできると考えています。(第2回に続く)

取材・編集:M&A Online編集部

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