M&A税務(6)100%子会社から親会社への分割型分割後の株式譲渡

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今回は、非事業用資産などを親会社へ切離した後、株式譲渡を行うメリットについて解説します。

100%子会社から親会社への分割型分割後の株式譲渡

前回ご紹介した「分割型分割後の株式譲渡」とともに平成29年度税制改正以降、検討事例も多く出ています。譲渡企業の株主に資産管理会社がある場合も多く、100%子会社である譲渡企業から親会社へ譲渡対象外事業を移したあとに、譲渡するスキームが考えられます。

現物分配ではできない事業承継が行えるという特徴があります。

前回の記事はこちら
M&A税務(5)実務でよく利用される分割型分割後の株式譲渡

実施場面

譲渡企業の株主が100%親会社である場合、譲渡企業に非事業用資産があればM&A前の適格現物分配により無税で親会社に動かすことが考えらえますが、次のような場合には、親会社への無対価の吸収分割が考えられます。税務上この分割も分割型分割と考えます(法人税法2十二の九ロ)。

①譲渡企業の複数事業のうちの1つを譲渡対象外として親会社に残したい場合
*適格現物物分配では事業を承継できない

②譲渡対象外とする不動産の金額が大きく、会社分割の不動産取得税非課税要件(前回「分割型分割後の株式譲渡」で記載)を充足できる場合(無対価でも満たすことができます)
*適格現物分配では不動産取得税の非課税要件は存在しない

③適格現物分配を行うための分配可能額がない場合
*適格現物分配では分配可能額の範囲内で実施必要

スキーム概要

100%子会社から親会社への分割型分割後の株式譲渡 スキーム概要
筆者作成

組織再編税制の適格判定

1.適格判定

上図スキームで分割後、100%親会社と譲渡企業との支配関係の継続見込みは不要であり、親会社がM&Aにより譲渡企業株式を第三者の譲受企業へ譲渡しても適格となり、無税で会社分割を行えます(法人税法施行令4の3⑥一イ)。

2.付替計算

親会社が保有する譲渡企業株式の税務上の簿価は次のようになり、株式譲渡損益の計算上留意が必要です。
*詳細:法人税法61の2④、法人税法施行令119の3⑱、119①六、119の8、23①二

①(分割前)譲渡企業株式取得費

②「① ×(承継資産等の純資産(分母を上限)/ 前期末譲渡企業純資産)」

    ③(分割後)譲渡企業株式取得費=①-②

    3.適格の場合の注意点

    親会社と譲渡企業との間で50%超の支配関係が5年以内の場合には、一定の場合を除き、親会社において繰越欠損金の使用制限や含み損のある資産の譲渡損の損金算入制限の対象となるため、注意が必要です。

    「中小企業M&A株式譲渡の税務」(きんざい)より抜粋

    なお、実務においては、顧問税理士等の専門家にご相談いただき、ご対応されることをお勧めします。

    文:村木 良平(税理士)

      村木 良平 (むらき・りょうへい)

      税理士
      1975年7月 大阪府生まれ
      大阪府立北野高等学校、同志社大学経済学部卒業
      株式会社日本M&Aセンターで12年間、M&A案件を主に税務・ストラクチャー構築面から関与。関与案件は千件以上にのぼる。MVP賞、社長賞等受賞。同社コーポレートアドバイザー部(西日本)の責任者を5年間経験後、2021年に独立。税理士会や各実務者向けの講師も数多く行う。
      税理士業務、経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、J-SOX、国際税務含めた税務実務、上場企業同士の再編実務、PMI等を経験。

      著書『中小企業M&A実務必携税務編』(きんざい、2016年・2018年)
      *改訂版として『中小企業M&A株式譲渡の税務』を2021年10月に発刊

      公式サイト https://murakitax.com


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      分割型分割後の株式譲渡とは、譲渡企業から非事業用資産を分割型分割により切離し、譲渡企業を譲渡するスキームで、平成29年度税制改正以降、太陽光事業、不動産事業、非事業用資産の承継など、実務的にも多く利用されています。