現金などを対価として株式を取得する株式譲渡はM&Aにおける最も典型的な方法の一つといえます。このような株式譲渡が行われた場合、売主側ではどのような課税が生じるのかを把握しておくことはM&Aの交渉を進めるうえでも有効といえるでしょう。そこで今回は株式譲渡の売主側の課税関係を整理してみることにします。

売主が個人株主の場合は譲渡所得が発生

株式譲渡にかかる税金を考えるにあたっては売主が個人なのか法人なのかを区別する必要があります。まずは売主が個人の場合を考えてみましょう。個人に課される税金としては所得税や住民税があります。株式を譲渡した場合にもこれらの税金が関係します。

株式の譲渡所得(譲渡益)は「上場株式等」と「一般株式等」に分けて計算されますが、算式や適用される税率は基本的に変わりません。ただし、一方で生じた損失を他方で生じた利益から控除することはできないので、その点には注意が必要です。譲渡所得の算式は下記のようになります。

譲渡所得等の金額=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)

所得税や住民税と聞くと、所得が多くなるにつれて適用される税率も高くなる「超過累進税率」を思い浮かべる方がいるかもしれません。しかし、株式等の譲渡所得は経常的に生じる所得ではないため、他の所得と合算して超過累進税率で課税される「総合課税」ではなく、他の所得とは区分して課税される「分離課税」が適用されます。

株式等の譲渡所得に課される税率は「上場株式等」と「一般株式等」のいずれにおいても所得税15%、住民税5%の合計20%となります。なお、平成25年から平成49年(2037年)までの期間は所得税額の2.1%が復興特別所得税として所得税と合わせて課されます。

売主が法人株主の場合は株式売却損益が発生

これに対して、売主が法人の場合には株式売却損益が発生します。法人では分離課税などの適用はありませんので、他の損益と合算された後、法人全体の所得に対して法人税や住民税、事業税などが課されます。

つまり、株式売却により損失が生じれば、法人全体の所得を下げることになりますし、上場株式とその他の株式の間でそれぞれ売却益と売却損が生じれば、それらも通算されることになります。

税率も法人全体で同じものが適用されます。会社の規模や自治体によって違いはありますが、法人税、住民税、事業税を合わせた実効税率はおおむね30%前後になります。