1.2020年度税制改正の大綱|5G導入促進税制

昨年12月20日、2020年度税制改正大綱が閣議決定されました。これは翌年度に施行される税制改正の概要をまとめたもので、その後各省庁が関連する税制改正のポイントを説明する資料を発表し、2月初旬頃には財務省が税制改正法案を掲載し、3月末の国会承認を経て、4月1日から改正法が施行される、という流れになります。

5G(第5世代移動通信ネットワーク)の整備を早期に円滑に実現するためには、全国に十分な基地局を設置する必要があります。そこで5G基地局、及びローカル5Gと呼ばれる、企業等が自前で小規模の5Gの通信網を構築するための設備投資に対して、税額控除(15%)又は特別償却(30%)ができるようになります(5G導入促進税制)。

政策的な税制ではこの他、高い生産性が見込まれる事業を行う等の目的で、設立10年未満の特定の事業活動を行うベンチャー企業に1億円以上出資の払い込みをする場合、その取得価額の25%を損金算入できる制度が創設されました(オープンイノベーション投資促進税制)。これは、事業会社が自前の開発にこだわることなく、ベンチャー企業へ出資することで新たな分野への投資を後押しするためのものです。

また連結納税がグループ通算制度に移行することになります。すなわち、従来の企業グループ全体を一つの納税単位とする現行制度に代えて、企業グループ内の各法人を納税単位としつつも、損益通算等の調整を行う仕組みになります。これまで、従来の連結納税制度の計算が煩雑で、また税務調査後の修正や更正等に時間がかかりすぎるため、導入を見送っていた企業グループもありました。

そこで、完全支配関係のある企業グループで損益通算のメリットは維持しながら、グループ通算制度に移行後は、各法人が納税単位として税額計算を行い、その後修正や更正があっても、グループ内の他の法人の税額計算に反映させないことになり、手続の簡素化が図ることができます。

2.2020年度税制改正の大綱|キャッシュレス化に対応した帳簿保存の見直し

また、法人税法そのものではありませんが、前年度に続いて電子帳簿保存制度の見直しがありました。具体的には、企業が電子取引を行った場合の、請求データや受領データの保存方法として、次の2つの方法が新たに認められることとなりました。

1つは、従来は、(請求書等のデータに)発行者側がタイムスタンプを付したとしても、さらに受領者側でもタイムスタンプを付する必要があったものが、不要となりました。もう1つは、(請求書等のデータの)受領者が自由にデータを改変できないシステム(例えばクラウド会計システム)を利用して電子的に受け取った請求書等のデータをそのまま保存する場合にもタイムスタンプの付与が不要となり、いずれも処理が現行より簡略化されます。

現在、クラウド会計を中心に、銀行データや、クレジットカード、プリペイド式カードデータから自動仕訳を起票する機能がありますが、その場合でも請求書原本や領収書の原本を紙ベース、あるいはPDF化してタイムスタンプを付して、別途保管する必要があります。

今回の改正により、銀行取引やキャッシュレス決済のデータが一気通貫で直接会計システムに登録され、一度登録されたデータの改変が出来ないシステムを採用している場合は、紙ベースの原本や、タイムスタンプでのPDF化は不要となります。

これにより、紙の領収書の受領や保管の作業、原始証憑と起票データの照合等が原則不要となるため、クラウドによって事務処理が簡略化されている現実に即して、税制上も証憑類の保存形態を改めたものと言えます。

帳簿保存の在り方を見直す単純なことではありますが、キャッシュレス化と働き方改革(=生産性の向上)、ペーパーレス化が同時に図れるという、うまく行けば1粒で3度美味しい改正ということになります。その意味で、この改正の効果は思いの外、インパクトは大きいと思います。但し、日付と金額だけでは、損金性を説明できないため、誰と何のために支出した経費であるかの摘要等への追記は必要になると思います。

文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.109 2020.1.31)より抜粋