海外M&Aなどを実施して、海外に子会社などの関連企業を有する場合、「移転価格税制」について留意しなければなりません。移転価格税制という言葉にはあまり馴染みがないという方も多いかと思いますが、ここでは、その概要をわかりやすくお伝えしたいと思います。

移転価格税制は各国政府が税源を逃さないための制度

移転価格税制というのは、海外にある身内の会社に対して、通常の取引先とは異なる価格で物やサービスを販売ないし提供している場合に、通常の価格を基準として所得を計算して課税する制度です。

このような制度がどうして必要になるのかというと、身内の会社に対しては自由に価格設定できるため、その価格如何によっては本国で所得を出すか、身内の会社の所在地国で所得を出すかを操作することも可能だからです。これは各国政府の税務当局から見ると、自国の所得が海外に移転して税金を取りはぐれる可能性があることを意味しています。

移転価格税制の基準は「独立企業間価格」

身内の会社と通常の取引先で取引価格が異なる場合に移転価格税制が問題となります。通常の取引先との取引価格は「独立企業間価格」と呼ばれます。つまり、身内の会社との取引価格がこの独立企業間価格と異なる場合、独立企業間価格を基準に所得を計算しなおすことになるのです。

財務省ホームページより

上に掲載した図をもとに、簡単な数値でイメージをつかんでみましょう。図の中では、海外にある身内の会社のことを「国外関連者」と呼んでいます。

図の上部(「関連者間取引」)は、国内にある対象法人が100円で仕入れてきた商品を国外の関連者に110円で販売したケースです。国内の対象会社では10円(=110円ー100円)の利益が発生します。一方、国外関連者では110円で仕入れた商品を外部に150円で販売して40円(=150円ー110円)の利益が発生しています。

図の下部(「第三者間取引」)では、第三者との取引では販売価格が120円であるケースが示されています。国内の対象法人が100円で仕入れてきた商品を国外の第三者に120円で販売し、20円(=120円ー100円)の利益が生じていることがわかります。国外の第三者はこれを150円で外部に販売し、30円((=150円ー120円))の利益が生じています。