M&A税務(5)実務でよく利用される分割型分割後の株式譲渡

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前回の記事では、グループ通算制度から子会社売却で離脱する場合の留意点について解説しました。

前回の記事はこちら
M&A税務(4)グループ通算制度(子会社売却で離脱する場合)

今回は、分割型分割後の株式譲渡について解説します。

譲渡企業から非事業用資産を分割型分割により切離し、譲渡企業を譲渡するスキームで、平成29年度税制改正以降、太陽光事業、不動産事業、非事業用資産の承継など、実務的にも多く利用されています。

税負担なく非事業用資産を切り離す

分割型分割後の株式譲渡では、株主がオーナー一族のみで構成され非事業用資産の金額が大きい場合、税負担なく分割型分割により切離しを行えることから、スキームとして有効となる場合があります。

スキーム概要

①譲渡企業(分割法人)が非事業用を含む資産を会社分割の制度により新会社(分割承継法人)に承継させ、
②新会社がその対価として新会社の株式を譲渡企業に交付し、
③譲渡企業がすぐにその新会社の株式を譲渡企業のオーナー(株主)に配当し、
④分割後、譲渡企業の株式100%を譲受企業に売却します。

①~③の会社分割を「分割型分割」といいます。分割後、新会社と譲渡企業は兄弟会社の状態となります。

分割型分割後の株式譲渡による切離しスキーム
©筆者作成

分割型分割後に株式譲渡を行う効果

分割型分割後に株式譲渡を行うことで期待される主な効果は、次のとおりです。

・許認可、契約、従業員等を譲渡企業に残したまま譲渡できる
・オーナーに譲渡収入が入り、株式譲渡の20.315%の税負担で済む
・株価圧縮され譲受企業の投資額が低くなり、M&Aがまとまりやすい
・オーナーは非事業用資産を買取りする際の資金が不要となる
・不動産賃貸業等を切離し、相続税対策として有効な場合がある

組織再編税制の適格判定

適格判定

オーナー(*)が100%保有している譲渡企業では、分割型分割後、オーナー(*)が分割承継法人株式すべてを継続保有見込みであれば、分割法人株式をM&Aにより譲渡しても適格となり、無税で会社分割を行えます(法人税法2十二の十一イ、法人税法施行令4の3⑥二ハ(1))。

なお、50%超グループ等の適格判定の記載は省略します。

*親族(詳細:法人税法施行令4①、民法725)含む。ただし、適格とするためには、分割法人の持ち株割合に応じて分割承継法人株式を交付する必要があります。

分割後の付替計算

適格分割型分割を行った場合には、分割法人株式の取得費の一部または全部について、次のように分割承継法人株式の取得費へ付替計算を行う必要があります。

1.分割承継法人株式取得費

    (分割前)「分割法人株式取得費 ×(承継資産等の純資産(分母を上限)/ 前期末分割法人純資産)」
     *詳細:法人税法施行令119①六、119の8、23①二、所得税法施行令113①、61②二

    2.(分割後の)分割法人株式取得費

      (分割前)「分割法人株式取得費 ー ①の金額」
       *詳細:法法61の2④、法令119の3⑱、所令113③

      分割後、個人株主が分割法人株式を譲渡する場合には、上記金額と「譲渡収入×5%」のいずれか大きい金額を取得費とできます。

      登録免許税と不動産取得税

      他の株式譲渡スキームと同様に不動産を受け入れる分割承継法人(新会社)側は、所有権移転の際に登録免許税と不動産取得税が原則としてかかります。

      ただし、不動産取得税や自動車税環境性能割は、次の4つの要件をすべて満たす会社分割の場合には非課税となります(地方税法73の7二、150①二、地方税法施行令37の14、44の3①)。

      会社分割の不動産取得税などの非課税要件

      ① 会社分割の対価として株式以外の資産が交付されない(株式が交付される分割型分割の場合は分割法人の株主の持ち株割合に応じて交付されるものに限る)
      ② 分割事業の主要な資産と負債が分割承継法人に承継
      ③ 分割事業が分割承継法人で引き続き継続見込み
      ④ 分割事業の従業者の概ね80%以上が分割承継法人の業務に従事見込み

      以上、「中小企業M&A株式譲渡の税務」(きんざい)より抜粋

      次回は、非事業用資産を無税で親会社に動かすケースについて解説します。なお、実務においては、顧問税理士等の専門家にご相談いただき、ご対応されることをお勧めします。

      文:村木 良平(税理士)

        村木 良平 (むらき・りょうへい)

        税理士
        1975年7月 大阪府生まれ
        大阪府立北野高等学校、同志社大学経済学部卒業
        株式会社日本M&Aセンターで12年間、M&A案件を主に税務・ストラクチャー構築面から関与。関与案件は千件以上にのぼる。MVP賞、社長賞等受賞。同社コーポレートアドバイザー部(西日本)の責任者を5年間経験後、2021年に独立。税理士会や各実務者向けの講師も数多く行う。
        税理士業務、経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、J-SOX、国際税務含めた税務実務、上場企業同士の再編実務、PMI等を経験。

        著書『中小企業M&A実務必携税務編』(きんざい、2016年・2018年)
        *改訂版として『中小企業M&A株式譲渡の税務』を2021年10月に発刊

        公式サイト https://murakitax.com


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        2017/08/21

        平成29年度税制改正により組織再編税制が見直されました。財務省の税制改正の解説で、本改正は、「近年行われている多様な組織再編成に対応する」ためになされたと説明されています。なかでも実務家の間で話題となっている改正が、分割型分割における関係継続要件の見直しです。その影響で、不動産M&Aの実務が大きく変わることになります。