M&A税務(2)グループ通算制度の概要と加入

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グループ通算制度の概要と加入

M&Aを実施する際に、譲渡企業が100%株式譲渡によりグループ通算制度へ加入した場合、税務上特有の論点があります。

今回は、M&A実施前に押さえておくべきグループ通算制度について説明します。

グループ通算制度の概要

グループ通算制度は、令和2年度税制改正において、連結納税制度から移行(改組)される形で設けられた制度です。連結納税グループは、令和4年4月1日以後開始事業年度から、原則として、グループ通算制度に自動的に移行します。

(1)対象範囲
 グループ通算制度の対象範囲は、親法人と親法人による100%支配関係のある法人となり、親法人の100%子会社や100%子会社が所有している会社(いわゆる孫会社)も含まれます。

(2)所得と欠損の通算
 内国法人グループ各社の所得と欠損を通算できる点は連結納税と同様です。

(3)法人税(地方法人税含む)の申告納付
 連結納税制度では、連結親法人が行っておりましたが、グループ通算制度では、グループ内の各法人がそれぞれ行うことになります。

(4)株式譲渡M&Aにおける連結納税制度と主な違い
 ① 加入法人*のみなし事業年度(特例)の末日に「会計期間の末日」が追加。
 *グループ通算制度適用グループの100%子会社となった譲渡企業。以下同じ。
 ② 加入法人の資産の含み損益の実現および税務上の繰越欠損金の切捨てが緩和。
 ③ グループの子会社株式を譲渡した場合の「税務上の子会社株式の簿価修正」について、子会社の税務上の簿価純資産価額に合わすよう変更。

 ※②および③は、次回以降に分けてご説明します。

グループ通算制度に加入した場合

(1)内容
 譲受企業グループがグループ通算制度を適用している場合、100%子会社となった譲渡企業は自動的にグループ通算制度の適用対象法人となり、制度の対象外とすることはできません。

 原則として、株式の引渡しがあった日が通算グループへの加入日となります。

(2)申告納付
 加入法人(譲渡企業)は、通算グループに加入するにあたり、事業年度の途中で決算を区切り(「みなし事業年度」と呼びます)、その後2ヵ月以内に単体としての加入前最後の申告納付が生じます。

(3)みなし事業年度
 次のように①の原則と②の特例を選択できることから、実務的には、届出を提出することにより、②を選択するケースも多くあります。

 ① 原則:事業年度開始日~株式の引渡日の前日まで(法人税法14④)
 ② 特例:事業年度開始日~株式の引渡日の前日の属する月の月次決算期間の末日または会計期間の末日まで(法人税法14⑧)

 ②特例を選択する場合は、親法人が①原則に係る申告期限までに、完全支配関係を有することになった旨等を記載した書類を所轄税務署に提出する必要があります。

グループ通算制度(概要と加入)
「中小企業M&A株式譲渡の税務」(きんざい)より抜粋

次回は、譲渡企業が100%株式譲渡によりグループ通算制度に加入した場合の評価損益計上と繰越欠損金の取扱いについて説明します。

なお、実務においては、顧問税理士等の専門家にご相談いただき、ご対応されることをお勧めします。意見にあたる部分は著者個人の見解です。

文:村木 良平(税理士)

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村木 良平 (むらき・りょうへい)

税理士
1975年7月 大阪府生まれ
大阪府立北野高等学校、同志社大学経済学部卒業
株式会社日本M&Aセンター(東証1部)で12年間、M&A案件を主に税務・ストラクチャー構築面から関与。関与案件は千件以上にのぼる。MVP賞、社長賞等受賞。同社コーポレートアドバイザー部(西日本)の責任者を5年間経験後、2021年に独立。税理士会や各実務者向けの講師も数多く行う。
税理士業務、経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、J-SOX、国際税務含めた税務実務、上場企業同士の再編実務、PMI等を経験。

著書『中小企業M&A実務必携税務編』(きんざい、2016年・2018年)
*改訂版として『中小企業M&A株式譲渡の税務』を2021年10月に発刊

公式サイト https://murakitax.com


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