M&A税務(4)グループ通算制度(子会社売却で離脱する場合)

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グループ通算制度(子会社切離しによる離脱)

前回の記事では、グループ通算制度に加入する際の留意点について説明しました。今回は、子会社売却(切離し)による通算グループからの離脱について解説します。

前回の記事はこちら
M&A税務(3)グループ通算制度(加入時の時価評価と繰越欠損金)

「中小企業M&A株式譲渡の税務」(きんざい)より抜粋

グループ通算制度から離脱する際の留意点

通算グループが100%子会社(譲渡企業)の株式をM&Aにより譲渡した場合の主な留意点は、次のとおりです。

(1)離脱日と申告納付
 通算グループからの離脱日は株式の引渡日とされ、離脱日の前日で決算を区切り、譲渡企業は単体申告納付を行います(法人税法14④二)。
 ただし、離脱日の前日が親法人の事業年度末と一致していれば従前通りグループ通算制度により申告納付を行います(法人税法14③)。

(2)時価評価は不要
 特殊な場合を除き、譲渡企業の保有資産の時価評価は行いません。

(3)繰越欠損金
 譲渡企業の税務上の繰越欠損金はそのまま使用できます。

(4)繰延譲渡損益の実現
 譲渡企業が譲受法人または譲渡法人となりグループ法人税制の適用を受けた繰延譲渡損益は実現します。

(5)税務上の子会社株式の簿価修正
 税務上の子会社株式簿価をその離脱する子会社の税務上の簿価純資産価額(資本金等の最終値と利益積立金の最終値の合計額)に修正する必要があります(法人税法施行令119の3⑤、119の4①)。

 連結納税制度では、子会社株式の売却時等に、税務上の子会社株式簿価を連結納税適用期間中のその子会社の税務上の利益積立金の増減額だけ修正する必要がありました。

 一方で、グループ通算制度では上記の取扱いとされたことにより、通算グループが、のれん代をつけて譲渡企業株式を100%取得した後、その譲渡企業を株式譲渡により転売する場合には、こののれん代部分はグループ通算制度では売却原価に入れることはできず、連結納税制度よりも不利になるといえます。

「中小企業M&A株式譲渡の税務」(きんざい)より抜粋

令和4年度税制改正大綱の改正案について

なお、この取扱いを是正するために、令和4年度税制改正大綱(令和3年12月10日公表。P67-68)にて、上記の税務上の簿価純資産価額に子会社株式に係る資産調整勘定等対応金額(のれん代相当)を加算できる措置を講ずるという改正案が記載されており、改正の動向に留意が必要です。

次回は非事業用資産の切離し方法について説明します。

文:村木 良平(税理士)

村木 良平 (むらき・りょうへい)

税理士
1975年7月 大阪府生まれ
大阪府立北野高等学校、同志社大学経済学部卒業
株式会社日本M&Aセンターで12年間、M&A案件を主に税務・ストラクチャー構築面から関与。関与案件は千件以上にのぼる。MVP賞、社長賞等受賞。同社コーポレートアドバイザー部(西日本)の責任者を5年間経験後、2021年に独立。税理士会や各実務者向けの講師も数多く行う。
税理士業務、経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、J-SOX、国際税務含めた税務実務、上場企業同士の再編実務、PMI等を経験。

著書『中小企業M&A実務必携税務編』(きんざい、2016年・2018年)
*改訂版として『中小企業M&A株式譲渡の税務』を2021年10月に発刊

公式サイト https://murakitax.com


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