無申告「ほ脱」事案が増加傾向

2011年度には、国税による査察にも大きな影響を与える、もう一つの税制改正が行われました。それは、故意に申告書を提出しないことによるほ脱犯(単純無申告ほ脱犯)の創設です。「ほ脱(逋脱)」というのは脱税のことを意味します。

従来は、故意であっても故意でなくても、単に「申告書不提出罪(単純無申告罪)」として処罰されることになっていました。法定刑も「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と比較的軽いものでした。

これに対して、2011年度改正税法の適用以降は、故意に申告をしないで税を免れた者に対する法定刑は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはこれらの併科」という重いものになりました。

「平成30年度査察の概要」では、他人名義を使用したFX取引(外国為替証拠金取引)に対する無申告ほ脱事案が紹介されています。インターネットを利用した自動売買ソフトを用い、FX取引により多額の利益を得ていたD氏は、数十件の他人名義で取引を行うことにより、所得を隠していたとのことです。その所得に対する確定申告も一切行っていないという事例でした。

消費税の不正受還付未遂と同様、「単純無申告ほ脱犯」に対する告発も2014年度が初のものとなりました。2014年度には2件の告発でしたが、その後、適用事案は徐々に増加し、2018年度には10件の告発となりました。

違法な手口で得たカネに税金はかかるのか

FX取引には直接関係しませんが、2019年8月2日付の朝日新聞デジタルの記事では、FXを取扱う金融会社のアフィリエイト広告から得られた収入を申告せず、約5400万円を脱税した事案が報じられています。健康補助食品販売会社を営む男性社長を名古屋国税局が所得税法違反容疑で静岡地検に告発したものです。

実は、このアフィリエイト収入は男性社長が3万~4万件もの他人名義のFX口座を開設して得たものであり、いわば、アフィリエイトのASPや広告主から騙し取ったお金です。この事案に「単純無申告ほ脱犯」による罰則が適用されるかどうかは不明ですが、そもそも「違法な手口で得た収入を確定申告する義務があるのか」という疑問を持たれる方もいるのではないでしょうか。

この疑問に対する答えはYESです。例えば、所得税法基本通達には「その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」との記載があります。違法に入手した金員に対して適正に税務申告をするケースは考えにくいのですが、違法であったとしても、収入があれば課税の対象にはなるので、確定申告をする義務があるということです。

文:北川ワタル