ITデューディリジェンスを進める上で気を付けたい3つのポイント

M&A実行の際になくてはならないITデューディリジェンス(以下「ITDD」)。新会社発足時にITトラブルを発生させていては、会社としての信頼を一気に失うことになる。

一方で、一般的なM&Aのフェーズを考えると、ビジネスデューディリジェンスの後にITDDが始まるので、新会社発足まで1年弱の期間しかない場合がほとんど。この期間でITメンバーは、買収先のIT資産を確認し、基幹システムを片寄せするか、並行稼働させるかを判断する必要がある。また発足を遅らせることの無いよう移行計画を立て、ミッションクリティカルな案件として推進せねばならない。
そこで本稿では、軽視されがちなITDDにおいて、よくトラブルが発生するポイントを解説しよう。

ポイント1:買収先のIT資産のデータ移行が容易か

企業買収にせよ事業買収にせよ買収先のIT資産を移行する必要があるのは間違いない。ERPなどのアプリケーションの違いに目が行きがちなのだが、「データ」に注目してITDDを進めたほうが、コスト的にもスケジュール的にも現実的な計画が立てやすい。

例えば買収先がSAPを使用し、自社ではGRANDITを使用していた場合であれば、パッケージ製品同士のデータ移行であるため、買収先のデータ規模を調べれば、ITベンダーでの見積もりが立てやすい。

一方で、買収先がAccessとExcelを組み合わせたツールを使っていた場合はいかがだろうか。一見すると汎用性が高いデータで処理しているので、自社ERPにデータ投入しやすいと錯覚してしまいがち。実際にはデータフォーマットが定まっていなかったり、製造ラインによって使うツールがまちまちでオペレーションマニュアルが整備されていなかったりして、移行にはコストがかかると考えたほうがよい。

さらに買収前のデューディリジェンスの段階なので、買収先の現場が使っている独自ツールを密に調査することが難しいというデメリットがある。そんな場合は新会社発足時のERP統合をあきらめるのも一つの手だ。発足後の運用プロセス改善の中でERPへのデータ統合をした場合と、合併時にデータ変換した場合の両方でコストを試算し、安いほうを選択したい。

ポイント2:ライセンス費用に変更はないか

会社規模が異なる場合、買収先が使っているアプリケーションのライセンス費用が、中小企業向けのライセンス体系で課金されていることがある。これを意識せずにライセンス費用を見積もってしまうと、新会社発足後に追加費用を請求される懸念がある。

例えばOffice製品を扱うマイクロソフトの場合、契約期間のみに使える「非永続ライセンス」と期間なく使える「永続ライセンス」の2種類に対してデバイス数やユーザー数ごとに異なるライセンス体系が取られている。

非永続ライセンスを使っている小さな会社や事業部門を買収する際にコスト増となることがほとんどであり、そのまま移行するとライセンス違反となってしまう懸念があるため、入念にヒアリングし調査したいポイントである。

ポイント3:新会社発足後のシステム統合の計画は現実的か

ポイント1にも少し関連するが、こちらは最終的なIT資産の最終的な話だ。新会社発足のための期間を優先してITDDを進めていく中移行作業に必要なコストを見積もり、高いコストとなる作業を先送りにした結果、新会社発足には間に合ったものの発足後のIT予算が積み上がってしまい、業績に大きく影響することがある。

ITDDを進める中では、新会社発足後のIT予算のうち、「移行作業の後始末」にかけられる予算をあらかじめ経営サイドと合意しておく必要があるのだ。

ビジネススキームや人員配置などは新会社発足後を見越した戦略が立てられているのに対し、IT目線ではないがしろにされがちな部分であるため、移行計画を立てる際に注意したいポイントである。発足後のIT予算不足に陥らないために、①移行作業にかかる費用、②新会社発足後に対応する費用、③新会社発足後の全体のIT予算計画 の3つを移行計画書に盛り込み、最終的な経営の移行判断を受けるようにしたい。

文:M&A Online編集部