相次ぐ子会社の「解散」まだまだ尾を引くコロナ禍

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写真はイメージです

上場企業による子会社の解散が相次いでいる。業務スーパーを運営する神戸物産<3038>は2023年7月24日に、中国大連で食品を製造する「大連福来休食品」を解散すると発表した。

フォークリフト大手の三菱ロジスネクスト<7105>は7月20日に、中国安徽省でフォークリフトの製造を手がける「優嘉力叉車」(安徽)を清算、ビール大手のサッポロホールディングス<2501>も7月12日に米国サンフランシスコでビールを製造する「アンカー・ブリューイング」を解散すると発表した。

子会社や事業の売却も高水準

このほかにも2023年になってWebメディア支援のINCLUSIVE<7078>、着物などの販売仲介の日本和装ホールディングス<2499>、スマホ用バーコードリーダ―生産のアスタリスク<6522>、自動車部品製造のアスカ<7227>、在宅介護のケア21<2373>、自動車用シート製造のテイ・エス テック<7313>、アルバム製造のナカバヤシ<7987>なども海外子会社の解散を決めた。

新型コロナウイルス感染症の影響で業績が悪化したことや、情勢変化によって中国などでの事業継続が難しくなったことなどが主因だ。

同様の理由で上場企業による子会社・事業の売却も高い水準にあり、2023年上期(1-6月)の件数は2年ぶりに増加、2014年以降の10年間では2021年上期(168件)、2020年上期(140件)に次ぐ3番目の件数となった

新型コロナウイスがインフルエンザなどと同じような扱いになったことから行動制限などがなくなり日常が戻りつつあるものの、企業経営に関してはコロナ禍の影響はまだまだ尾を引きそうだ。


環境変化で決断

神戸物産が解散する大連福来休食品は、業務スーパーで販売するプライベートブランド商品の製造を担ってきたが、大連市の経済発展などに伴う周辺環境の変化で、食品製造拠点としての優位性が低くなったため解散を決断した。

2023年10月31日に清算を終える予定で、同社で生産していた製品の一部は、中国山東省にある子会社の神戸物産(安丘)食品(中国山東省)に移管する。

三菱ロジスネクストが解散する優嘉力叉車は、すでにフォークリフトの生産を停止し、工場を閉鎖している。同社では「外部環境の変化への対応と中長期計画における生産体制の適正化」を解散の理由として挙げている。これから清算手続きに入る予定で、清算完了の時期は未定という。

サッポロホールディングスが解散するアンカー・ブリューイングは1896年創業の老舗で、2017年にサッポロの傘下に入った。コロナ禍で売り上げが大きく落ち込み赤字経営が続いており、中長期的にみて収益の改善は難しいと判断した。

コロナ禍と中国での環境変化が要因に

INCLUSIVEは、コロナ禍でハワイを訪れる日本人観光客が急減したこと、日本和装ホールディングスは、コロナ禍で海外事業を計画通りに進めることが困難になったことから解散に踏み切った。

アスタリスクは欧州での事業環境が厳しいこと、アスカは中国の経済発展に伴い人件費や資材価格が高騰していること、ケア21は中国での事業継続に疑義が生じたこと、テイ・エス テックは生産体制の最適化、ナカバヤシは中国の工場所有者との間での交渉が決裂したことなどを解散の理由として挙げている。

【2023年に上場企業が子会社を解散した主な事例】

子会社解散表

文:M&A Online

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