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完全子会社化取引における買収後の経営体制の合意について考える|ニトリの「島忠TOB」から
ニトリHDによる島忠株式への公開買付け(TOB)は当初、DCMによる島忠へのTOBに対抗公開買付けであったことから注目された。本件は完全子会社化取引であるにもかかわらず、経営体制維持の合意が行われた点が特徴的であるといえる。
DCMホールディングス<3050>とコーナン商事<7516>のホームセンター上場大手2社が2023年2月期にそろって営業減益となった。DCMは3期ぶり、コーナンは2期連続だ。
コロナ禍で増加した巣ごもり需要の反動減や節約志向の高まり、円安やウクライナ情勢に伴う原材料価格の高騰などが利益を押し下げた。
両社は2024年2月期に、やはりそろって増収増益を見込む。実現すれば2021年2月期以来3期ぶりとなる。
人口減少による市場の縮小をはじめ物価上昇に伴う消費マインドの停滞、原材料価格や人件費の上昇などマイナス要因は数多くあるもののコロナ禍の影響が縮小し、需要が回復するとの読みが背景にある。
果たして読み通り進むのか。両社の実情を見てみると。
DCMの2023年2月期の営業利益は300億6800万円で前年度比1.9%の減益となった 経常利益、当期利益も同様に2.5%、3.6%の減益だった。
園芸部門やDCMブランド商品が堅調だったほか、2022年3月に完全子会社化した家電を中心とするEC(電子商取引)事業者のエクスプライス(2021年6月期:売上高647億900万円、営業利益12億3100万円)の業績を第2四半期から加えたが、コロナ禍による影響を取り除くことができなかった。
売上高は4768億2100万円(前年度は4447億5000万円)だったが、この期から会計基準を変更したため前年度との増減率は公表していない。
【DCMホールディングスの業績推移】単位:億円、2024年2月期は予想
一方、コーナンの2023年2月期の営業利益は220億1900万円で、前年度(257億8800万円)より37億6900万円(会計基準を変更したため増減率は非公表)減少した。経常益利も34億7400万円、当期利益も23億5500万円減少した。
原材料価格の高騰やエネルギー費用の上昇などが利益を圧迫した。売上高は4390億2400万円で、こちらも21億9800万円の減収となった。
【コーナン商事の業績推移】単位:億円、2024年2月期は予想
2024年2月期については、DCMはデジタル技術を活用した店舗業務の効率化を進めるとともに、エクスプライスのEC事業と、DCMのリアル店舗の連携を深め、相互送客、非家電領域での品ぞろえ拡充などの相乗効果を見込む。
2024年2月期はエクスプライスの業績がフルに加わることもあり、売上高は4940億円(前年度比3.6%増)、営業利益は310億円(同3.1%増)と3%台の増収増益を見込む。
コーナンの2024年2月期は、売上高4532億円(同3.2%増)、営業利益228億円(同3.5%増)と、こちらも3%台の増収増益見込みだ。ただ、同社では2023年6月に子会社化するホームセンター事業のホームインプルーブメントひろせ(大分市)の業績をこの数字に含めていない。
ホームインプルーブメントひろせは、食品スーパーとホームセンターを併設した「スーパーコンボ」を主軸に41店舗を展開しており、コーナンが引き継ぐ事業の2022年5月期の売上高は229億300万円、営業利益は6億6300万円だった。
これが加われば、増収増益率はさらに高まるものと思われる。両社の増収増益の実現は買収した子会社に左右されることになりそうだ。
文:M&A Online
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ニトリHDによる島忠株式への公開買付け(TOB)は当初、DCMによる島忠へのTOBに対抗公開買付けであったことから注目された。本件は完全子会社化取引であるにもかかわらず、経営体制維持の合意が行われた点が特徴的であるといえる。