「2021年後半から世界的な大不況に」M&Aは減少 服部暢達氏(早稲田大学客員教授)に聞く

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写真はイメージです

日本の経営者は売りから入るべき 

―2020年は上場企業による子会社や事業の売却が増えました。この現象をどのように分析されますか。

正にこれをやるべきだと、昔から言ってきた。M&Aは平均すると100億円の会社を130億から140億円で買っている。売り手はノーリスク、買い手は100億円のものを140億円で買うわけだからリスクが高い。それでもなぜ買うかというと、例えば170億円から180億円にできると思えるからであって、この自信がないのなら買ってはいけない。 

日本の企業は「なんとなくうまくいくような気がするから」だとか、「アドバイザーが140億円出せというから出したら買えた」というようなことが多い。欧米の経営者はM&Aをたくさんやっており、売り手と買い手のリスクの違いをよく分かっている。自社のEPS(1株当たり利益)が上がるという自信がないと、そう簡単にはやらない。 

M&Aに精通していない日本の経営者はリスクの高い買いから入ってはダメ。売りから入ってM&Aを勉強してから、そのあと買いも少しやったらいい。売りをもっとやるべきだと考えている。ただ、日本の経営者は売るのが大嫌いで、買うのが大好き。今は苦しいから売っているだけで、喉元すぎれば忘れてしまう。景気がよくなれば、また買い出すでしょうね。 

【服部暢達(はっとり・のぶみち)氏略歴】

1981年3月東京大学工学部卒業。日産自動車を経て、1989年6月にマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン・スクール経営学修士課程卒業。1989年から2003年まで米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックスで、日本のM&Aアドバイザリー業務を担当。1998年からはマネージング・ディレクターとして同業務を統括。
日本リースのリース事業のGEキャピタルへの売却、第二電電・KDD・日本移動通信の3社合併、ロッシュによる中外製薬の買収、NKKと川崎製鉄の経営統合などの大型案件を数多く手がけた。
2003年10月から一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員助教授(2006年10月から客員教授)、2009年4月から早稲田大学大学院ファイナンス研究科(現経営管理研究科)客員教授としてM&Aと企業価値評価の講義を担当するかたわら、服部暢達事務所を設立して、日本における株主価値増大に資するM&Aの研究・評論活動を行っている。

文・聞き手:M&A Online編集部 松本亮一編集委員

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