「2021年後半から世界的な大不況に」M&Aは減少 服部暢達氏(早稲田大学客員教授)に聞く

alt
写真はイメージです

2020年の日本のM&Aは、前年並みの件数で推移しており、取引金額は前年実績を大きく上回っている。コロナ禍の中でもM&Aに対する企業の姿勢が積極的だったことが分かる。ただ8月以降は徐々に件数が前年実績を下回るようになっており、2021年に向けて不透明感が広がりつつある。

そこで、米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックスでM&Aアドバイザリー業務を担当し、日本企業が関係する大型案件を数多く手がけた服部暢達氏に、M&A市場の現状や2021年の見通しなどについてうかがった。 

日本の世界シェアが上昇 

―2020年のM&A市場をどのように見ておられますか。

今年の日本のM&Aは、コロナ禍で経済活動が抑えられた割には、少なくはなかった。M&A大盛況というわけでないが去年並みを維持している。一方、世界全体のM&Aは最近、戻ってきているものの3月、4月、5月が極端に少なかったため、年間では13%ほどの減少になる見込みだ。この結果、日本の世界シェアは去年まで5年ほど連続して2%くらいだったのが、今年は11月までで2.7%に上がっており、年間では3.1%ほどになりそうだ。 

―2021年も新型コロナウイルスの影響はありそうですか。

影響は出るだろう。それは世の中も政治も必要以上に新型コロナウイルスを恐れているからだ。欧米で死亡率が高かったのは医療崩壊を起したためで、これを阻止できれば、新型コロナウイルスはインフルエンザ並みの死亡率である0.1%くらいに落ち着くのではないかと思っている。 

日本では6月以降、死亡率は1%を割っている。米国や英国、イタリアなどの医療崩壊を起こした国では死亡率は5、6%になったが、最近は1%に近いところまで来ている。こうした状況をみると、たぶん恐れ過ぎなのだと思える。恐れ過ぎていると経済活動は必要以上に落ち、当然M&Aにも影響が出ることになる。 

来年は年初に第3波が収まり、夏が近づくころになって、だんだん世の中が冷静になってくるのではないだろうか。それまで経済は厳しい状況が続き、M&Aも抑えられるだろう。さらに景気の波を分析すると、来年後半から再来年の前半にかけて世界的な大不況がくることは避けられそうにない。来年は厳しい年になりそうだ。

自社株対価のM&A、株下落で一気に縮小も

―自社株対価のM&Aが容易になる会社法の改正が予定されています。

会社法の改正は成立しているが、施行されていない。今年、施行される予定だったが、コロナ禍で飛んでしまった。来年の3月1日に施行の予定だ。そうすると自社株対価のM&Aが実際に行えるようになり、その時点までに税制も対応することになるだろう。 

―自社株対価のM&Aが容易になることで、大型のM&Aが増えることが見込まれますが、どのようにお考えですか。

株で対価を払うM&Aが増えるのは、株価が高い時、バブルの時。これは相対的に少ない株で、相手の株を手に入れることができるためで、自社株が高いと思う会社はこの手法を使うだろう。現在は株が高い状態にあるので、この状態が続けば株式対価のM&Aは増えると思う。だが、私は来年は株が下落するとみているので、そうなれば一気になくなるだろう。 

NEXT STORY

【著者登場】『ゴールドマン・サックスM&A戦記』服部暢達さんに聞く

【著者登場】『ゴールドマン・サックスM&A戦記』服部暢達さんに聞く

2018/06/14

ニュースを騒がせた大型M&Aの舞台裏を知るうえで格好の一冊。その名も『ゴールドマン・サックス M&A戦記』(日経BP社)。著者の服部暢達さんは世界最強の投資銀行とされるゴールドマン・サックス時代、日本の企業史に残る数々のM&Aにかかわった。