昔から日本では、会社や飲食店などを、親から子供へと引き継ぐ「親族内承継」が行われてきました。中小企業や小規模事業では、経営者とその家族を中心に会社や家業が営まれてきました。

親が師匠となって、自社の技術や味を守るために、子供は早い時期から技術や経営のイロハを学び、経営者が一定の年齢になると子供が後を継ぐことがごく普通のことでした。 

「親族内承継」の現状と対策 

今までは普通に行われてきた「親族内承継」ですが、近年、だんだん困難になってきています。それはだいぶ前から問題になっていた、少子高齢化による後継者不足が大きな原因となっています。 

加えて、親や子の価値観の変化もあります。昔から家業は継ぐものという考え方が主流でしたが今は違います。親は先のことを考えて、子供に自分以上の苦労をさせたくないと思い、子供は職業の選択の幅が広がった現代、家業より自分のやりたい仕事に就きたいという意識の変化があります。 

こうしたことから、中小の会社や飲食店では、やむなく廃業を選択することは決して少なくありません。しかし、廃業によって消滅してしまえば、従業員の雇用はもとより、独自の技術や伝統の味などはすべてなくなってしまうことになります。 

中小企業庁の最近の発表によると、2025年あと5年後に、このような中小企業、小規模事業の127万社が廃業し、それにより失業する従業員の数650万人、GDP(国内総生産)500兆円強のうち22兆円も損失すると予測しているのです。これは大きな問題です。 

国ではこうした危機的状況を回避するため、さまざまな施策を実施しています。例えば、会社経営の場合、「親族内承継」では経営者の所有する株式を、後継者に移転しなければなりません。その際には贈与税や相続税がかかります。 

この負担がとても大きいため、支援策としては、一定の方法による贈与時課税の猶予、そして2018年に大幅改正された事業承継税制の特例措置などがあります。この特例措置は相続税・贈与税の猶予ですが、実質的には税金の免除といってもよいほど画期的なものです。 

「親族内承継」のメリットとデメリット 

「親族内承継」のメリットは、何といっても従来通り経営が安定すること。家族経営なので、創業以来の伝統や味も受け継がれやすいこと。経営者から子供などの親族への承継であれば、従業員や取引先などからの同意も得やすいというのが主なメリットです。 

これに対しデメリットとしては、後継者難や税負担など以外に、親族内の対立が生まれてしまえば、承継後の経営が不安定になり、業績が悪化し最悪廃業してしまうこともあります。 

「親族内承継」を行う上でのポイント

「親族内承継」を行う上でのポイントとしては、まず、早い時期に家族会議で後継親族を決めることです。後継者が決まったらすぐに、後継者への段階的な自社株の移転を始めます。できれば経営者以外の親族株主の持分も移転し、代わりに他の財産を付与するなどの対策を講じると良いでしょう。 

また、自社株を取得するには、贈与税や相続税が課されます。そのため役員報酬を上げる、会社名義で不動産を取得する、生命保険に加入するなどの株価の引き下げ対策が必要になります。 

そのほか、早めに役員・従業員に知らせて同意を得る、同様に取引先企業や金融機関などにも告知し、協力を得られる体制を構築しておくことです。 

少子化により「親族内承継」は年々厳しくなってくるでしょう。しかし、守り続けた伝統や味を継承するために、知恵を絞って廃業だけは避けたいものです。

文:特定行政書士 萩原 洋