火星移住計画や米ロサンゼルスでの3D地下トンネル掘削など、度肝を抜くアイディアを打ち出す米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。「この1年は困難と痛みを伴い、耐えがたいほどつらかった」。8月19日、米ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューの中でマスク氏は心情を吐露した。最近の労働は週120時間、プライベートな時間はないに等しく、まったく眠れないか睡眠導入剤を服用していると語り、涙を流して言葉に詰まる場面が何回もあったという。

マスク氏「つらかった1年」 社会を仰天させた言動

この報道をうけ、英ガーディアン紙は「1年を振り返ってみよう」とコメントし、Timelineで「2018年 マスク氏問題言動」を掲載した。下記はその一部である。

愛車を搭載したロケット打ち上げ
2月6日、新型の大型ロケット「ファルコン・ヘビー」打ち上げに成功。マスク氏はインスタグラムで、「普通はコンクリートや鉄を積載するが、それでは退屈だ」とコメント。マスク氏個人所有のテスラ社スポーツカー「ロードスター」を搭載した。運転席には、スペースX社の宇宙服を着たマネキン「スターマン」を座らせ、エンドレスのBGMはデビッド・ボウイのSpace Oddity。(同車の宇宙空間ドライブ風景は、「Live Views of Starman」というタイトルで公開。)

エイプリルフールジョーク「テスラ社経営破綻」が裏目に
4月1日、「テスラ社は経営破綻した」とツイート、テスラ車にもたれ意識を失っているふりをした自身の写真も投稿した。3月23日にモデルXが起こした死亡事故により、3月31日の時点でテスラの株価が2月の4分の1の価値にまで下落したことを逆手にとったジョークとされる。2日後に「エイプリルフールだ」と撤回したが、株価はさらに下落した。

タイ洞窟事故の英雄ダイバーを罵倒、世界中から批判殺到
7月15日、タイのサッカーチームの少年たちを洞窟から救出したイギリス人ダイバーに対し「小児愛者だ」とツイート、世界中の批判が集中しツイートは削除された。罵倒されたダイバーは、米CNNのインタビューに対し、マスク氏が提案していたミニ潜水艦を「狭隘で曲がりくねった現地での実用性は皆無。売名行為に過ぎない」と一蹴していた。

ツイッターでテスラの非公開化を宣言
8月7日、「テスラ株の非公開化を検討している」とツイッターで発表。事前に誰にも相談することなく、空港に向かう自動車の中で同メッセージを読み返すこともなく打ち出したとされる。非公開化に際しては、同社の株式を1株あたり420ドルで買いとる意向を表明、資金も確保済みとした。これに対し市場は、資金調達の現実味について懐疑的な見方を示した。マスク氏はその後、サウジアラビアのファンドSWFと交渉中と説明したが、「ツイート先行、手を打つのは後回し」との印象を残し、投資家の不信感も増幅。米証券取引委員会(SEC)も調査に乗り出している。

麻薬依存疑惑
8月13日、ラッパーのアジーリア・バンクス氏が、マスク氏のガールフレンドのグリスムスさんに誘われ、レコーディングの仕事を進めるため彼の家を訪問。「麻薬をやりながらツイートするなんてお馬鹿さん」とマスク氏の現状をツイッターでからかい、話題に。

19日に掲載されたニューヨーク・タイムズ紙のインタビュー記事は、株式の非公開や、精神的動揺を含めマスク氏の健康状態への懸念をかきたてるものとなり、株価は前日比で一時10%近く下落した。

ただ、マスク氏がインタビューで「3~4日、テスラの工場に泊まり込むこともあった」と語るほど心血を注いだ低価格EVセダンの「モデル3」は、順調な生産体制に入った模様。6月末までに週5000台の生産目標を達成したことが明らかになった。ただし、スイス大手投資銀行のUBSによると「駆動装置のコストがかさみすぎ、1台あたり6000ドルの赤字生産が続いている」という。

テスラ工場
懸案だった「モデル3」の量産は軌道に乗ったが…(同社ホームページより)