東京・原宿に残る唯一のお米屋さんに行ってみた。カフェやアパレルの店が建ち並ぶキャットストリートの一角、緑色の外壁が印象的な小池精米店。「原宿で米屋をやることは僕にとって快感です。この町で米屋はうちだけ。何か天の邪鬼みたいで、すごい面白いじゃないですか」と、店主の小池理雄さん(46)が笑いながら語る。

赤字家業の3代目を継いで

 大学卒業後は教材関係の出版社に就職。数年間編集業務に携わったが、「仕事があまり面白くなくて、何か違うことをやってみたい」と社会保険労務士の資格を取り、人事制度のコンサルティングファームに転職した。「中小企業で賃金の決め方とか人事制度の話をする。仕事は楽しかったし、いい会社だった」が、10 年前に退職。

 三人兄弟の長男。二人の姉は嫁ぎ、家には年老いた両親だけ。家業を継ぐ気はなかったが「父親は心臓が悪かったので、やっぱり心配なんですよね」

 当時、住まいがあった世田谷から神宮前の実家に戻り、家業を継いだ。

 三代目として店の経営を始めたものの、ビックリ仰天、台所は火の車で、会社はつぶれる寸前だった。「赤字だった。でも、赤字だから継がないというのもややこしい話でね」

 昔は米穀通帳を持ってお米屋さんに買いに行った。今はスーパーでも売っている。ネットでも買える。わが家では近所の農家から直接届けてもらっている。こういう都会のど真ん中で、しかも若者があふれる街でお米屋さんという商売が成り立つのか。(次回は3月6日掲載)

文:大宮知信