東京駅の開業と同じ、1914 年(大正3 年)の創業なのが東京・両国の革小物製造会社 東屋。その6 代目、木戸麻貴さん(44)は近代的なビジネスの世界から伝統産業へと転身した元OL。「ミスすみだ」に選ばれたこともある江戸っ子美人だ。

コンサルタント会社から伝統産業へ

 都内の女子大を卒業後、スポーツクラブの受付、航空会社の空港業務、外資系コンサルタント会社などさまざまな仕事を経験。「サービス業が好きだったので、楽しいOL生活を過ごした」。会社に勤めながら家の仕事を手伝っていたが、2年前、事業を継いだ。

 家業を継ぐつもりはなく、両親も継げとは言わなかったが「父が、職人さんがいる限り商売を続けたいと言うのを聞いて、家業を継ぐことが私の使命かなと思った」。

 新しい顧客の開拓、販路拡大など「少しでも会社の支援になるようなことを考え出した」のが事業承継のきっかけだった。取引先のブランドで製品を作るOEM(相手先商標製品)が基本で、小売りはしていなかった。

 OL時代、思いがけず勤めていた会社から「革のA4サイズの書類フォルダーを作ってほしい」という注文が入った。社員や取引先に贈るためのノベルティグッズ(贈呈用の品物)である。

「出来上がったものをお届けした時に、みなさんすごくうれしそうな顔をして。その喜んでくださるのを見て、革の小物を作る仕事というのは、すごくいい仕事なんだなと改めて感じた」。すぐに会社を退職し、東屋の6代目社長に就任した。

「2足のワラジ」は、新たなビジネスを生んだ。セキュリティカード、名刺入れ、ブックカバーなどノベルティグッズの提案は、それまでの東屋にはなかった商法だ。(次回は3月20日掲載)

文:大宮知信