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家業の革小物屋を継いだ元OLの使命感(下)

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家業は楽しいという東屋の6代目社長木戸麻貴さん

 東屋の6代目社長木戸麻貴さんは、事業承継をどうすべきか悩んでいた時、墨田区の「後継者育成塾」に応募し、1年間経営の基礎を学んだ。そこで問題点の分析をした結果、後継者がいないことが致命的だった。中小企業の人手不足は深刻だ。東屋でも77歳の父親を筆頭に、7人いる職人はいずれも65歳以上。新たな職人を養成しない限り、いずれ廃業せざるを得なくなる。一枚革から財布や小物入れなどを作る匠の技もそこで途絶える。

職人の育成が最重要課題

 モノづくりに興味がある学生の就活を支援する企業セミナーに参加したりしているが、なかなか採用までにはいたらないと嘆く。職人の確保、人材育成は最重要課題だ。

 墨田区の中小企業が開発した製品を「墨田モダン」として区が販路拡大のサポートをする制度がある。東屋の新しいブランド商品も2年前に認定を受けた。これまで東屋はOEM(相手先商標製品)で経営を維持してきたが、今後はそれに加えて、オリジナル商品の小売り、ノベルティグッズの受注を3本柱に事業を展開していく。

 家業を継いだ感想を聞いた。「楽しいです」という答えが返ってきた。

「不安はあるけど、これから起こることは全部自分のためだと思っています。それは無駄にはならない。今の若い人は簡単にあきらめちゃう傾向があるみたいだけど、挑戦する気持ちがあれば、私のような人間でもいろいろできるよといいたいですね」

 自分も伝統の技に挑戦しようと、職人の叔父について教えを受けてはいるが、一日中工房にこもって作業しているわけにもいかず、時間が取れないのが悩みだ。(おわり)

文 :大宮知信

大宮 知信 (おおみや・とものぶ)

1948年 茨城県生まれ。ジャーナリスト。政治、教育、社会問題など幅広い分野で取材、執筆活動をつづける。主著に『ひとりビジネス』『スキャンダル戦後美術史』(以上、平凡社新書)、『さよなら、東大』(文藝春秋)、『デカセーギ─漂流する日系ブラジル人』『お騒がせ贋作事件簿』(以上、草思社)、『「金の卵」転職流浪記』(ポプラ社)などがある。 


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東屋は創業100周年を機に、オリジナル・ブランド「AZUMAYA」を立ち上げ、小売りを始めた。高級ブランド化に成功すれば、ある程度利益も確保できるし、職人の工賃を上げることもできるとの考えがあった。