ご注意ください
この記事は公開から1年以上経っています。掲載されている情報は、公開当時のものです。

ネット通販プロが実店舗へ 「カセットテープ」で大胆起業(上)

alt
「前例のないことをやったほうが成功のポテンシャルは高い」というwaltz代表の角田太郎さん

古くさいと思われていたアナログのカセットテープやレコードが再び脚光を浴びている。東京・中目黒に世界的にも珍しいカセットテープの専門ショップがある。アナログの音楽ソフトであるカセットテープを中心に、レコードやラジカセなども販売。国内外の雑誌のバックナンバーや音楽関連書籍の販売、カセットテープの買い取りも行っている。ネットで音楽が聴けてしまうデジタルの時代に、わざわざお店までやって来てカセットテープを買う人がいるのか。時代に逆行しているのではないか。いったいどんな人が経営しているのか、中目黒にあるカセットショップwaltz(ワルツ)に行ってみた。

ネットのプロが実店舗で起業

東急中目黒駅から徒歩10分ぐらいの住宅街にあるwaltzに行ってビックリ。落ち着いた店内に、膨大な量の音楽テープがぎっしり並ぶ。waltz代表の角田太郎さん(48)が笑顔で迎えてくれた。角田さんはネット通販大手のアマゾンに勤めていたネット通販のプロ。そんな人がなぜアナログの店を? 角田さんが苦笑しながら言った。

「中古のカセット屋じゃなく、カセットカルチャーを紹介している新しいお店です」

大学卒業後、レコード店WAVE渋谷店でバイヤーに。その後、レンタル事業の会社に転職し「スーツを着て仕事をする」会社員を経験。ここの経営が傾いたため、新聞のアマゾンの求人広告を見て「これは自分がやる仕事だと思って」応募し、2001年6月に入社。消費財事業部長や新規開発事業部長を歴任した。

角田さんの出身地でもある中目黒はオシャレな店が多く、若者の間では「ナカメ」といわれて人気が高まっている。「音楽的な情報を発信するお店がなかったので、この町に音楽の店を作りたい」と思っていた。改めて周りを見渡すと、趣味で買い集めたカセットテープが1万本以上に達していた。「これを利用しない手はない」と、2015年3月に退職して会社をつくり、8月には開店してしまった。電光石火の早業だ。

日本のストリーミング(ネット上でコンテンツを再生する)は、ますます拡大傾向にあり、音楽はデジタルのスマホで十分という若者も多い。当初「事業プランを人に説明しても、カセットテープなんてだれが聴くの、という反応でした」と苦笑する。

「流行を追うことはみんな考えている。だからこそ、だれもやらないような、むしろうまくいかないと思われていたり、前例のないことをやったほうが成功のポテンシャルは高い」という。

ネット通販の大手で管理職にまでなった人が、そのポストをあっさり捨て、リアル店舗での成功を目指す。世の中には管理職に出世することが目的の人もいるが、角田さんは出世よりだれもやらない仕事、新しい仕事に刺激を求めるタイプなのだろう。(次回は8月21日掲載)

文:大宮知信

大宮 知信 (おおみや・とものぶ)

1948年 茨城県生まれ。ジャーナリスト。政治、教育、社会問題など幅広い分野で取材、執筆活動をつづける。主著に『ひとりビジネス』『スキャンダル戦後美術史』(以上、平凡社新書)、『さよなら、東大』(文藝春秋)、『デカセーギ─漂流する日系ブラジル人』『お騒がせ贋作事件簿』(以上、草思社)、『「金の卵」転職流浪記』(ポプラ社)などがある。 


NEXT STORY

【ベクトル】M&A 活用し、PR会社アジアNO1の座を目指す 

【ベクトル】M&A 活用し、PR会社アジアNO1の座を目指す 

2018/01/18

PR会社のベクトルは、これまで新規分野への参入や新しい地域での事業展開などの際にM&Aを活用してきた。業界でアジアナンバーワンになること目指す同社の西江肇司社長にとってM&Aが果たす役割は小さくなさそうだ。

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5