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オーダーメイドシューズ専門店を起業、元証券営業マンの「多毛作人生」(中)
婦人靴のマーケットは紳士靴の1.5倍といわれている。キビラ社長の福谷智之さんは今後、力を付けていけば「メンズを対象にした靴屋をやってもいいかなと思っている」と構想を巡らす。
キビラ社長の福谷智之さんは昨年9月に、足のサイズが計測できるスマホのアプリ「キビラビーナスフィット」を開発、インターネットで注文できるサービスを始めた。「アプリを使えば店に行かなくてもオーダーメイドの靴を購入できる。出店していない地域からバンバン注文が入るようになった」
現在、新宿、銀座、池袋など9店舗を展開。会社設立から4年経ったが、売り上げは順調に伸びている。2016年度は前期比120%の約6億円。今年は「まだ始まったばかりであまり偉そうなことはいえないが、百貨店の店も好調なので、ネット販売を中心に拡大して、去年の3倍の18億円まで持って行きたい」
当面、オーダーメイドシューズの事業に全エネルギーを傾注し、2020年までにレディースシューズ業界ナンバーワンを目指す。「講演や出版の話も来ているが、全部お断りしている。そんなの全然自分に向いてないからあまりやる気ないし、コンサルティングみたいな教えて指導するというのも嫌で、自分でやらないとイライラする」という。
証券マンからアパレルへの転職が「人生2毛作」とすると、学習塾が3毛作、オーダーメイドシューズの製造販売は4毛作目。今後の展望を聞くと「10年後、60歳になったら、この商売から引退するつもり」と意外なことを言う。
「60の還暦を過ぎた人間に、若い女性の気持ちや感性が分かるわけがない」
5毛作目は「投資家」を目指す。「お金もノウハウも提供して、ベンチャー起業家を育成したい」
根は証券マン。バブルの時に味わった投資の旨みが忘れられないのかも。(おわり)
文:大宮知信
1948年 茨城県生まれ。ジャーナリスト。政治、教育、社会問題など幅広い分野で取材、執筆活動をつづける。主著に『ひとりビジネス』『スキャンダル戦後美術史』(以上、平凡社新書)、『さよなら、東大』(文藝春秋)、『デカセーギ─漂流する日系ブラジル人』『お騒がせ贋作事件簿』(以上、草思社)、『「金の卵」転職流浪記』(ポプラ社)などがある。
婦人靴のマーケットは紳士靴の1.5倍といわれている。キビラ社長の福谷智之さんは今後、力を付けていけば「メンズを対象にした靴屋をやってもいいかなと思っている」と構想を巡らす。