音のエネルギーが普通のスピーカーの3倍

難聴者がミライスピーカーを使うと、なぜよく聞こえるのか。サウンドファンの佐藤和則社長は、ハッキリした原理もわからないまま製品開発を始めた。思い切った起業である。

「前は個人事業主でIT系のコンサルタントをやってましたので、食えりゃいいや」ぐらいの軽いノリで事業をスタートさせたが、「怪しいスピーカー」呼ばわりされたこともあった。自分もいま一つ自信がなく、「試作機を持って高齢者の施設を訪問し、これ聞こえますかと聞いて歩きました。

ある程度データが溜まり、量産化の目処も立ったのですが、それでも販売に踏み切れず」大手シンクタンクに持っていって感想を聞いたところ「3年も4年もかけて原理が解明されるのを待ってたらベンチャーはつぶれちゃうよ。効果があるんだったら販売しちゃいなさい」とのご託宣。フェイスブックで情報発信をしているうちに徐々に協力者が現れ、ベンチャーキャピタルから出資を引き出すことにも成功。

2016年4月施行された障害者差別解消法も後押し。国や自治体、企業は「差別解消の措置」として、聴覚障害者に対しても「聴こえ」の環境に配慮しなければならないという法律の施行によって「高齢者向け投資セミナーなどに、金融機関がミライスピーカーを導入してくれるようになった」と佐藤さん。

「開発を進めるうちに、音のエネルギーが普通のスピーカーの3倍ぐらいあって、小さな音でもエネルギーが強いから聞こえるということぐらいまではわかってきた」

2016年、東京三菱UFJ銀行が主催するビジネスコンテストのソーシャルビジネス部門で最優秀賞を受賞。昨年、世界発信コンペティションの東京都ベンチャー技術特別賞を受賞。りそな中小企業振興財団・日刊工業新聞主催の第30回「中小企業優秀新技術・新製品賞」でも優秀賞を受賞している。いまでは高齢者施設をはじめ、証券会社、銀行の窓口、空港のチェックインカウンター、待合室などの拡声器として様々な用途に使われている。(次回は6月6日掲載)

文:大宮 知信