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コーポレートガバナンスを考える CGSガイドラインの改訂と取締役会の実効性(下)
神田秀樹学習院大学教授が「日本としては珍しくアメリカではなく、ヨーロッパ、特にイギリスを参考に、ボードとエンゲージメントの2つの焦点を当てたことは特徴的」と述べているように、日本のコーポレートガバナンス・コードは英国の制度を参考にしている。
前回のコラムまでは、イベリア半島を舞台とし、キリスト教国家・スペインの中で人生を翻弄されたユダヤ教徒の人々の足跡を追ってきた。そして1492年、すべての財産をキリスト教徒に略奪され、スペインから追放されたユダヤ教徒の一部は16世紀以降オランダに集結。近代の幕開けに立ち会っていくことになる。
オランダは、1602年に世界初の株式会社「オランダ東インド会社」を立ち上げた。一方、イギリスが東インド会社を立ち上げたのが1600年だ。オランダ東インド会社はイギリスより2年遅れたにも関わらず、「世界初の株式会社」の称号を得た。それは、オランダ東インド会社が、完全とは言い難くとも「株主の有限責任制度」と「資本充実原則」、そして「株式譲渡自由原則」という株式会社の三原則を設立時から具備していたからだ。
これは本コラムの主題である「コーポ―レートファイナンス(企業金融)」理論の「骨格」そのものといって良い。イギリス東インド会社は、設立からしばらくは「当座企業」に近い性格で運営された。つまり、航海ごとに組成・清算されるプロジェクトファイナンスの要素を残していた。出資者は原則として無限責任だ。仕組みとしては第28回のコラムで考察した、コロンブスの航海におけるファイナンスと大差ない。これが、イギリス東インド会社が「世界初の株式会社」とは認知されていない理由である。
現在の株式会社の基礎となっている三原則。これがなぜイギリスではなくオランダで生まれたのか。そのような優れた仕組みを構築したのに、どうして最終的に世界の7つの海を支配したのがオランダではなくイギリスだったのか。そして、その過程に離散ユダヤ教徒はどのように関わり、あるいは関わらなかったのか。これらの疑問をひもとくのが今回からのテーマだ。
IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー
投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。
横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員
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ignite.info@ignitepartners.jp
神田秀樹学習院大学教授が「日本としては珍しくアメリカではなく、ヨーロッパ、特にイギリスを参考に、ボードとエンゲージメントの2つの焦点を当てたことは特徴的」と述べているように、日本のコーポレートガバナンス・コードは英国の制度を参考にしている。