前回のコラムでは、イベリア半島のユダヤ教徒が、その技術(特に医学)や専門性をきっかけとして時の権力者に重用されていく過程に触れた。12世紀以降、レコンキスタの進展により、イベリア半島は主にキリスト系の3王国(ポルトガル王国、カスティーリャ王国、アラゴン連合王国)の支配下となる。

ユダヤの徴税請負人=悪徳業者もフェイク

そしてこれらの王国は、ユダヤ教徒を「所有物(国王隷属民)」として管理し、様々な宮廷業務-とりわけ資金調達業務に従事させた。これはユダヤ教徒の金融業としては「ホールセール」にあたる。しかし、その内容は単なる融資・貸付とは異なるものだった。それが「徴税請負人」である。今回のキーワードはこれだ。

徴税請負自体は古代ローマから用いられた古典的手法で、税務当局(王室)から業務委託された貴族が徴税業務を代行する行為だ。古代ローマでは本来の徴税額より多くの額を徴収し、差額を抜き取って私腹を肥やす行為が横行したとされる。

これをもって徴税請負人は悪徳業者であるというイメージが強い。このことからまた、宮廷ユダヤ人として徴税請負を担った「ユダヤ教徒は悪徳だ」というイメージが植えつけられ、滑稽な「ユダヤ陰謀論者」を喜ばす要素となっている。だが、これもフェイクだと筆者は考えている。理由を説明しよう。

徴税請負は単なる「集金代行業」ではなかった

 「徴税請負」というと、いわば代行業のような印象を持つ人が多いだろう。業務委託契約を結んで徴税業務を請け負う、集金代理人である。そのような文字通りの請負方式による徴税も、もちろんあったと思われる。

しかし、実際にはもっと先進的で大がかりな仕組みが導入されている。今日の金融ビジネスの概念に当てはめるなら、「徴税債権の証券化」といって良いだろう。その仕組みについての詳細な資料はないが、「金融の道理」から推察するにおおよそ以下のような仕組みと考えて間違いないだろう。(参考:「スペインのユダヤ人」関哲行)

ユダヤ人は「あこぎな徴税人」ではなかった(Photo by DMCA)