前回は米国の「起業家精神」の源流の一つといえる、メイフラワー号がマサチューセッツ湾に到着する20年以上も前に北米大陸に進出したヴァージニア会社についてふれた。彼らは南米と同様のゴールドラッシュを目指したが、あえなく頓(とん)挫した

タバコで「死中に活」を求める

では、「金(ゴールド)」の発見という初期ビジネスモデル仮説が頓挫した中、トーマス・スマイスをはじめとするヴァージニア会社の投資家と経営者はどうしたのか。現代のスタートアップ用語でいうならば、どうハードピボット(事業転換)したのか。

彼らがピボットに賭けたのはタバコだ。ヴァージニアをはじめとする北米植民の過程で、現地の先住民たちがタバコを嗜んでいることはすでに知られていた。このタバコをヴァージニアで栽培し、本国イギリスなどで販売する。

これがヴァージニア会社の生き残りをかけたハードピボット戦略だった。そして、見事これに成功する。ヴァージニア会社は、タバコビジネスで息を吹き返したのだ。

タバコ、というプロダクトのビジネス優位性

今日、タバコといえば健康被害の観点から否定的にみられる商品の筆頭だ。筆者は医療専門家ではないから、タバコの健康被害について確かなことをコメントできる立場ではない。しかし、ビジネスの観点からは以下の理由でタバコは優れた商材だ。

市場規模が大きい
まず、圧倒的にターゲット(市場)が大きい。理論的には、成人すべてが潜在的ターゲットといえる。そして巧みにマーケティングすることで、潜在市場を顕在化していくことが可能だ。大成功するビジネスは必ず大きな市場にポジションしている。タバコは、まさにその典型だ。

優れたサブスクモデル
スタートアップ界隈ではサブスクリプション(サブスク)モデルが花盛りだ。一定のストック収入があるビジネスは事業を安定させる。当時のタバコの主流は「パイプで吸う葉タバコ」である。プリンターやコピー機ではなくインクやトナーで儲ける複合機メーカーの戦略と一緒で、優れたサブスクモデルなのだ。

習慣性が高く、チャーンレートが低い
タバコは習慣性が高い。習慣化するとやめられないのだ。これはビジネスの観点からすれば、チャーンレート(解約率)が低いことを意味する。チャーンレートが低いサブスクモデル、現代で言えばSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型ビジネスモデルだ。これは一定の固定費を回収すれば、巨大な儲けを生む優れたモデルである。

余談になるが、タバコとならんで初期の植民地経営を支えたのは、例えば南米や北米の他地域であれば「砂糖」である。これもまた市場が巨大で、習慣性が高いプロダクトだ。タバコや砂糖のように、市場が大きくて習慣性が高く、物流に向いてる(腐らない、運びやすい)商品が初期の植民地経営を支えたといえる。