前回は大航海時代の欧州諸国、特に大英帝国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 )による植民地支配と、それによる富の略奪と独占の歴史を振り返った。そしてそのプロセスの中で株式会社制度の骨格が形成されていったことを述べた。

米国で導入と批判が続く「デュアルクラス」

その上で筆者の見解として、株式会社という制度はイノベーションの創出に必ずしも向いていないのではないか、という考えを述べた。筆者はイノベーションの源泉は「起業家精神」だと考える。そしてやはり、株主の利益と起業家精神はしばしば衝突することがある。

筆者は株主資本主義大国でありながら、イノベーション王国(起業家大国)でもある米国に、この矛盾を昇華させていく制度上のヒントがあるのではないかと考えている。

その観点で筆者が注目している仕組みのひとつが、「デュアルクラス」(複数議決権株式の活用)だ。これは起業家(創業メンバー含む)に対して、1株で複数の議決権が付与された株式(B種普通株式と呼称されることが多い)を割り当てるものである。

最も多くみられるのは、B種株式1株当たり10議決権を付与するスキームだ。A種普通株式は当然1株1議決権なので、B種を持つ創業者の議決権割合は発行済株式数の保有割合より高くなる。これにより、起業家が会社の所有権(過半数の維持を狙うことが多い)を掌握することが狙いだ。

念のため最初に述べるが、筆者は必ずしもデュアルクラスに無条件の賛成ではない。もし筆者の元に、さしたる実績もない日本の起業家が来て、「デュアルクラスでやりたい」などと相談してきたらどうだろう。おそらく「おととい、お越しくださいませ」とお伝えして、丁重にお引き取りを願うはずだ。

本場米国でも最近ではシェアオフィス「wework(ウィワーク)」を展開するウィーカンパニーをめぐる一連の騒動で、創業経営者の「暴走」を招いてしまったデュアルクラスの弊害が争点のひとつとなった。デュアルクラスを手放しで称賛するのは、明らかに慎重さを欠く態度と言わざるを得ないだろう。