1347年に欧州に上陸したペストは、中欧と東欧を席巻し、ほどなく南欧イベリア半島に到達する。そして欧州各地で繰り広げられた惨劇が、この地でもまた繰り返される。ユダヤ教徒達は、基本的に隔離されたゲットーで生活し、かつ衛生面や食事面でユダヤ教の厳しい戒律(コーシャ)を守っていた。
そのため、ペストの流行がキリスト教社会より遅れた可能性があるとされる。これを見てキリスト教社会の大衆扇動家が叫ぶ。「サタンの手下、ユダヤ教徒が井戸に毒を撒いた。これはユダヤの陰謀である」...
レコンキスタ(イスラム教徒に奪われたイベリア半島の最征服)が進展すると、キリスト教系王国によってユダヤ人は徴税業務を担わされ、特別目的会社(SPC)のようなビークルを活用した「徴税債権の証券化」スキームを開発した。現代の財政理論にも通じる。
新型コロナウイルスの猛威が世界を覆っている。このウイルスの影響はすでに多くで語られている通り、私たちの経済社会そのものを根底から変えてしまうかもしれない。人類は昔から疫病と戦ってきた。そしてそれは大航海時代や資本主義経済の原動力となった。
この連載コラムでは「間違いだらけのコーポレートガバナンス」と題して、「コーポレートガバナンスの万能性」について懐疑的な視点から考察している。今回はこの連載の核となる「コーポレートガバナンスと企業成長、イノベーション」について説明しよう。