新型コロナウイルスの猛威が世界を覆っている。このウイルスの影響は、すでに多くで語られている通り、私たちの経済社会そのものを根底から変えてしまう可能性がある。

ウイルスと経済封鎖が招く「死」

今、世界は新型コロナウイルスの封じ込めと経済の再開という、究極の二律背反を乗り越えるために最大限の努力をしている。しかし、どのような道を選ぶにしても、恐らく避けられないのは、これまでよりも「死」が私たちの身近になるということだ。

封じ込めを優先すれば、経済的な困窮による死者が増えるだろう。さりとて、これまでのようにわずか一日で何十万機もの飛行機が空を飛び、何千万人もが世界を飛び回るような経済活動に戻れば、恐らく来るだろうウイルスの第2波、第3波の影響は計り知れない。

あくまで今日時点での推測だが、根本的な治療法が開発されて広く世界に普及するスピードよりも、このウイルスが世界を変えてしまうスピードの方が速いのだ。

今の世界は疫病の歴史の上に立っている

「コロナ後の世界」−それはどのようになるのか、現時点で予測することは難しい。だが、現代よりはるかに「死」というものが身近だった過去の時代に学ぶことはあるはずだ。私たちが住む「今の世界」は、歴史の長い時間軸に立つなら「かつての疫病後の世界」なのだ。

社会を作り変えてしまうほどの決定的なインパクトをもたらし、かつその影響が現代にも深く及んでいる疫病とはなにか。それはやはり中世から近代にかけて、欧州を中心に断続的に猛威を振るったペストだと思う。

その影響は芸術や文化といった精神的な要素に対する影響はもちろんだが、それだけではない。もっと直接的に我々の生活に直接根差す仕組み、そう株式会社の成立にも少なからず影響を与えているのではないか。少なくとも私はその可能性があると考えている。

前回までの連載でも述べたが、初期の東インド会社のメインプロダクトは「香辛料」だった。しかし、筆者自身が、いまひとつピンときていなかったことがある。それは「香辛料が解決した本質的な社会課題(ペインポイント)」だ。

現代の私たちが想像できる香辛料の価値としては、貴族の嗜好品としての香料、調味料、防腐剤。用途はそんなところだろう。筆者もそんな程度の認識だった。