コロンブスの第1回航海に必要とされた約200万マラベディ。感覚的にどのくらいの額だろうか。中世の貨幣価値を現在の価値に正確に換算することは困難だ。ここでは、諸資料に最も頻出する換算値から平均的な値を取って、日本円にしておおよそ10億円くらいという感覚で理解しておく。大きく間違ってはいないだろう。
前回のコラムで述べたように、コロンブスはこの200万マラベディのうち、12.5%(25万マラベティ=約1.25億円)を、自己資金として出資する必要があった。そうしなければ、航海利益の12.5%のリターンを創業者利益として得ることができない規約(サンタフェ規約)だったからだ。
コロンブスの航海を説明した諸資料では、コロンブスはこの資金を調達するためにイタリア人船乗りとしてのネットワークをフル活用した。そして、以下3人のイタリアの篤志家から「融資」を受けたと伝わる。
・フィレンツェの銀行家ジュアノト・ベラルディ
・商人リバロリオ
・商人フランシスコ・ピネッロ
コロンブスの航海を深堀りしている過程で、筆者の関心事のひとつはこの時の契約内容と条件だった。なぜか。大西洋に金塊をばらまくようなこのプロジェクトに「融資」をする。これはファイナンスの理屈からして、普通あり得ないからだ。
ハイリスク投資の資金を、借り入れ(元本保証+金利)で賄ってはならない。これはファイナンスの基本中の基本だ。本来はエクイティ(株主資本)で調達するべきだ。しかし何度もいうように、この時まだ株式会社は発明されていない。
だから、この航海のファイナンスを説明している資料では、この資金の性質を「融資」として整理している。ジャック・アタリ氏も同様だ。しかし、3人の篤志家とコロンブスの間で取り決められた契約内容は、本質的には融資(=Debt)ではなかっただろうと考えられる。
IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー
投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。
横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員
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