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経営者不正を考える

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4.有価証券報告書の虚偽記載について

ゴーン氏が起訴された直接の容疑は、有価証券報告書虚偽記載となります。有価証券報告書のわが国の開示のルールでは、報酬額が1億円以上であれば個別にその報酬を開示することになっています。漏れ聞いた話によると、「1億円ルール」ができたときは日産の件とは桁が違いますが、1億円を何とか下回るように「報酬の後払い」ということはそこここで起きた話だったとのこと。

当時、それほど開示にあまり積極的ではなく、また横並び意識が強かった日本人の気持ちとしてはわからなくもない感覚ですが、本当に情けない話だと思ってしまいます。経営者であれば、開示して恥ずかしい報酬をもらうべきではないと個人的には思います。

報酬開示の趣旨は、株主から委任を受けた取締役が、その働きに見合った報酬をどのように決めて、いくらもらっているかを示すものです。その全員の報酬を記載するのが本来の姿であって、そもそも1億円以上という線引きをするから、「高額」な人だけを洗い出してランキングするといった報道にもなるのだと思います。1億円未満であっても全員の役員報酬を開示している会社もあります。

実際、この事件が起きる前から金融審議会のディスクロージャーワーキンググループでも役員報酬の開示ルールについては見直しをしていく旨報告されています。

今後は報酬プログラム(算定方法)や実績についてより積極的なディスクロージャーが求められるようになっていくと思われます。

そして、今回虚偽表示の対象となった報酬の記載は公認会計士の監査対象外です。

このこと自体に驚かれた方も多いと思います。私自身もお客様に説明すると「そうなの?」と驚かれました。したがって今回のゴーン氏の件であまり会計監査の是非について大きな議論になることはないかもしれません。

ただ、同じ「有価証券報告書」という書類の中、しかも数字の部分について会計監査人の監査対象とそうでないものが混在していること自体、社会一般からみれば非常にわかりづらく、さらに公認会計士への信頼を損なっているようで大変残念に思います。今後、有価証券報告書における監査対象外の情報への公認会計士
の関与が検討されることになるのではないかと思います。

会計士業界としては、今回の件から「会計監査には関係がない」と安心するのではなく、監査が「社会」から認めてもらうため、「社会からの期待」に応えるため、会計監査の役割をどのような情報発信をしていけばいいのか、また経営者不正についてどのように対峙していくべきかよくよく考えないといけないように思います。

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