主力の石油事業を切り出す

同社が食品事業に力を入れた背景には、主力事業の分割もあった。潤滑油の販売から始まった「キグナス」ブランドの石油事業は「キグナス石油」として成長する。1949年には石油元売業者の指定を受け、キグナスマークのガソリンスタンドを展開。1958年には子会社の「日網石油精製」を設立し、石油精製事業にも乗り出す。

しかし、多額の設備投資を必要とする割に利益率が低い石油事業は、次第に経営の重荷になっていく。そこで1971年に新会社の「キグナス石油」を設立し、売上高の大半を占めていた石油部門を分離する。翌1972年には水産専門商社としての再出発を社内外にアピールするため、52年ぶりに社名変更を実施して現在の「ニチモウ」となった。

事業分割は続く。バブル崩壊で業績が低迷したのを受け、1994年に下関生産部を分離・独立して、子会社の「ニチモウプロダクツ」(現・西日本ニチモウ)をへ移管。ニチモウは商社機能に特化することで企業体質を強化した。とはいえ、祖業の漁網を切り捨てたわけではない。翌1995年には米漁網会社のNET Systems社を買収しており、海外展開で活路を開いている。

2010年には九州一円への食品を中心とした配送事業を行う物流会社である西日本キャリテックの発行済株式の全てを、その親会社であるキャリテックから取得して子会社化した。ニチモウは加工食品の拡販を大きな目標としており、西日本キャリテックの物流業務を通じて、小売店の販売動向を把握することで、チルド食品の開発・拡販につなげていくことを目指した。

ニチモウはM&Aで新たな事業を果敢に取り入れ、事業分割で「選択と集中」を実現してきた。これこそが100年以上にわたって成長を続けてきた原動力といえるだろう。

M&Aと事業分割で「浜から食卓まで」を実現したニチモウ(同社ホームページより)