【カクヤスグループ】再編含みの酒販業界、ピンチを逆手に「シェア拡大」へ意欲的

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東京都港区内の「カクヤス」店舗

次のターゲットは名古屋・仙台・札幌

となると、気になるのが福岡に続く今後の展開エリア。カクヤスが中長期のターゲットと位置づけるのは名古屋、仙台、札幌の3都市だ。いずれも現在は空白地帯だが、現地プレーヤーとの提携やM&Aも視野に入れて進出を検討するとしている。

忘れてはならないのが大阪。1997年に大阪府内に第1号店(吹田市江坂)を出店し、20年以上となるが、数は12店舗に過ぎない。「短期的に注力予定」とするのがほかでもない大阪だ。「カクヤスモデル」の拡充に向けてどうアクセルを踏み込むのか、関心が集まる。

これまでのM&Aの取り組みはどうか。2007年に業務用食材卸のミクリード(東京都中央区)を手始めに、10年に文具・事務用品のオフィス・デポ・ジャパン(横浜市)、12年に日本酒・焼酎販売の検校(横浜市)、14年に床仕上げ工事のスペースアート十番(東京都新宿区)を矢継ぎ早に買収した。このうち、ミクリードは今年3月に東証マザーズに上場した。

1990年代にディスカウント業態に転身

カクヤスは1921(大正10)年に「カクヤス酒店」として東京都北区に創業し、100年の歴史を持つ。名前のカクヤスは「格安」を意味するわけではない。日本酒を飲む器の四角い「角枡(かくます)」と創業者の佐藤安蔵(やすぞう)に由来する。

どこでもあるような町の酒屋だったが、現在のようなディスカウント業態に衣替えしたのは1990年代。92年に「酒 スーパーディスカウント大安」を地元の東京都北区に2店舗オープンしたのが始まりだ。

躍進の原動力となったのはすでに述べたように東京23区に集中出店するドミナント作戦。年中無休、配達の無料化、2時間以内(当初)無料配達などの新機軸を次々に打ち出した。2002年に店名を現在の「なんでも酒や  カクヤス」に統一。翌03年には100店舗を達成した。

2017年に稼働した業務用配送拠点「南東京センター」(東京流通センター新B棟6階西側、東京・平和島)

近年は郊外型の大型店「KYリカー」を神奈川県を中心に出店しており、30店舗を超えたところ。

業務用酒販の再編、シェア拡大の好機に

国内の酒類市場は若者のアルコール離れなどで縮小が続いている。ボリュームゾーンの業務用需要がかねて低迷していたところに今年、コロナ禍が重なった。こうした厳しい環境下、業務用酒販業界の再編が取りざたされるが、カクヤスは「シェア拡大の機会」とあくまでも前向きだ。

持ち株会社制の目的は戦略管理機能と業務執行機能を分離し、成長領域への大胆な資源配分を可能にする体制づくりにある。ポストコロナを見据え、ピンチをチャンスをどう変えていくのか、M&Aを含めた次の一手が注目される。

主な沿革
1921 東京都北区豊島に「カクヤス酒店」を創業
1982 株式会社カクヤス本店を設立
1992 「酒 スーパーディスカウント大安」を東京都北区に2店舗オープン
1997 関西第1号店を大阪府吹田市にオープン
1998 配達サービスを無料とする
2000 店舗屋号を「なんでも酒やカクヤス」に変更
2002 来店者への無料配達サービスを開始
カクヤス本店から「カクヤス」に社名を変更
2003 100店舗を達成。東京23区内全域での2時間枠無料配達網を完成
2007 業務用食材のミクリード(2020年3月マザーズ上場)を子会社化
2010 文具・事務用品販売のオフィス・デポ・ジャパン(横浜市)を子会社化
2012 1時間枠での配達を開始
日本酒・焼酎販売の検校(横浜市)を子会社化
ワインと花のギフトセット販売を目的にリンクフローリスト(東京都品川区)を設立
2014 床仕上げ工事のスペースアート十番(東京都新宿区)を子会社化
2017 社内物流専用の平和島流通センターを東京都大田区に開設
2019 東証2部に上場
2020 5月、業務用酒類販売のサンノー(福岡市)を子会社化
10月、持ち株会社への移行に伴い、「カクヤスグループ」に社名変更

文:M&A Online編集部

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