いすゞは2021年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画に取り組んでおり、この目標達成にUDトラックスの買収が大きく絡んでくる。
中期経営計画の中で課題として掲げている商用車事業の強化に直接結びつくだけでなく、目標としている2021年3月期の売上高や営業利益の達成にも欠かせない存在となってくるからだ。
いすゞの2020年3月期の当初予想は、売上高2兆1600億円、営業利益1650億円だった。これが第2四半期決算を発表した2019年11月には、売上高は2兆1600億円で変わらないものの、営業利益は1500億円に引き下げた。
さらに第3四半期決算を発表した2020年2月には、売上高を2兆1000億円に、営業利益を1420億円にそれぞれ引き下げた。国内外で販売台数が減少したほか、ピックアップトラックの輸出拠点となるタイのバーツ高により輸出採算が悪化したことなどから2度にわたる下方修正を余儀なくされたのだ。
いすゞの2021年3月期の目標は、売上高が2兆3000億円、営業利益率が3カ年平均で9%という数字。平均の9%で計算すると2021年3月期の営業利益は2070億円になる。子会社化するUDトラックスの2018年12月期の売上高は2565億1100万円、営業利益は11億600万円だった。
UDトラックスの株式取得の日程は固まっていないが、2020年3月までに株式取得が実現すれば、UDトラックスの1年分の業績が連結対象となる。そうなれば少なくとも売り上げ目標は達成できる可能性が大きく高まる。もちろん、 UDトラックスが黒字を確保できれば営業利益面でもプラスになる。
だが、株式取得日が期日ぎりぎりの2020年末となれば、連結対象となる期間は2021年1月から3月までの3カ月間となり、影響は限定的となる。いつ買収が完了するのかで、中期経営計画の達成に大きな差が生じる。
1916年創業のいすゞは、国内の現存自動車メーカーの中では最古となる100年越えの歴史を持つ。いすゞは2022年5月に本社を創業の地である大森(東京都品川区)から横浜市に移し、次の100年に向けて新しいスタートを切る。
ボルボとカミンズというパートナーを得たいすゞは、横浜の地でどのような未来を拓くだろうか。
【いすゞ自動車の業績推移】2020年3月期は見込み、2021年3月期は計画、2021年3月期の営業利益は営業利益率9%で算出、1億円未満は切り捨て
2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |
売上高 | 1兆9531億円 | 2兆703億円 | 2兆1491億円 | 2兆1000億円 | 2兆3000億円 |
営業利益 | 1464億円 | 1667億円 | 1767億円 | 1420億円 | 2070億円 |
経常利益 | 1520億円 | 1736億円 | 1890億円 | 1490億円 | ー |
当期純利益 | 938億円 | 1056億円 | 1134億円 | 850億円 | ー |
文:M&A Online編集部
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