「民泊絶滅」でも既存の旅館・ホテルは生き残れない

こうした低料金宿泊施設が成り立つ条件には(1)原則素泊まりで、夕食は提供しない(2)宿泊者向けの接客サービスはチェックイン・チェックアウト、地域の観光情報提供など最低限とし、従業員の人数を抑える(3)カフェやバー、レストラン、イベントスペース、物販施設などを併設し、宿泊以外の収益と従来の旅館や民泊にないブランドイメージの向上を図る(4)(主に欧米から来た)外国人旅行者が好む宿泊者同士や地域住民と交流できるスペースを設けるーがある。

低料金宿泊施設が成り立つ4条件をすべて満たす「廻屋」のカフェ・交流スペース(廻屋ホームページより)

国内観光客から見放されたローカル観光地には、「外国では知られていない場所」を好む外国人リピーター観光客を呼び込む傾向がある。活気を失った「昭和の観光地」も、低料金宿泊施設の開設でインバウンド需要を掘り起こすことが可能だ。特に古民家や廃業した小規模な日本旅館を改装した物件は、外国人旅行者だけでなく大都市で生活する日本人観光客からも人気がある。

日本旅館協会は民泊新法での規制は不十分として、民泊を許可する区域を定めると同時に年間稼働日数の上限を180日からさらに短縮する条例制定を自治体に求めていく方針だ。が、民泊を制限したところで、低料金宿泊施設の増加に歯止めはかけられない。

民泊新法に併せて決まった旅館業法の規制緩和で、最低客室数や洋室の構造設備要件、トイレの設置数規制が廃止され、義務付けられていた玄関帳場もインターネットや情報端末などの代替設備で対応が可能になるなど、民泊が旅館業へ転換するハードルは下がった。民泊業者が大量に低料金宿泊施設へ転換すれば、民泊新法による規制の意味はなくなる。

たとえ新法で民泊が消えたとしても、そうした低価格宿泊施設を利用してきた観光客は既存の旅館やホテルには戻らない。民泊に脅威を感じる宿泊施設はハイエンドな高級旅館・ホテルとして生き残るか、低料金宿泊施設にリニューアルするしかないだろう。

文:M&A Online編集部