近年、⽇本企業が海外企業を買収するIN-OUT型のM&Aが活発となっています。こうした海外M&Aは日本企業の成長にとって不可欠であるとの認識のもと、経済産業省は昨年8月より海外M&Aに関する知見を有した専門家を集めて「我が国企業による海外M&A研究会」を数次にわたって開催してきました。

経済産業省はこれらの研究会における議論や検討の結果を取りまとめ、2018年3月27日に「我が国企業による海外M&A研究会報告書」として公表しました。今回はこの研究会報告書のポイントを紹介したいと思います。

経営トップの主体的なコミットが重要

報告書全体を通して伝わってくるのはM&Aのすべてのプロセスにおいて経営トップが主体的にコミットすべきであるという主張です。つまり、経営トップ⾃らが海外M&Aの本質を理解し、リーダーシップを発揮することが期待されているという訳です。

その上で報告書は海外M&Aに必要とされる3つの要素を掲げています。それは「M&A戦略ストーリーの構想力」「海外M&Aの実行力」「グローバル経営力の強化」です。以下、具体的な内容を確認してみましょう。

M&A戦略ストーリーの構想力

「M&A戦略ストーリーの構想力」とは、成長戦略とストーリーを具体化し、海外M&Aの位置づけを明確にすることを指しています。これは、ともすれば「ディールありき」になりがちな成長戦略の在り方を戒め、オーガニック成長や提携などの代替案との比較検討にもとづいた合理的な戦略決定を促すものです。

また、経営トップがストーリーテラーとして企業のビジョンや戦略を社内外に発信するとともに、現場への浸透を通じて関係者を行動へと導くリーダーシップの発揮をも含意しています。

海外M&Aの実行力

「海外M&Aの実行力」とは、企業自身がM&Aに関するリテラシーを十分に身につけ、外部のアドバイザーに依存し過ぎることなく、M&Aを主体的に遂行する能力を指します。

M&Aのプロセスにはデューデリジェンス、バリュエーション、条件交渉、契約締結といったディールの実行に関わる部分から、ディール成立後の統合プロセスであるPMI(Post Merger Integration)に至るまで専門的な知見やスキルが必要となります。こうした実行力を社内に蓄えておく重要性が説かれています。

グローバル経営力の強化

「グローバル経営力の強化」とは、海外企業を買収したあとに優れた手法や人材を取り入れながら企業グループ全体に変革をもたらし、真の成長につなげることを指しています。

3つの要素の関係性に目を向けると、「M&A戦略ストーリーの構想力」と「海外M&Aの実行力」の2つの要素は、結局のところ「グローバル経営力の強化」を実現するための手段とも考えられます。