M&Aで低価格宿泊施設づくりが加速する

既存の旅館・ホテルも「民泊型」の低価格宿泊施設に力を入れ始めた。2016年には奥州三名湯の一つとされる秋保(あきう)温泉(仙台市太白区)で、温泉大浴場完備の素泊まり型ローコストステイホテル「KYOU BARLOUNGE & INN」が開業した。

前払いのチェックイン、チェックアウトは自動精算機で無人対応し、夕食も提供しない。カフェ(夜間はバー)を館内に設け、宿泊以外でも収益を上げるなど、徹底したローコスト経営で1泊3000円(ツインルーム2名利用時の1人料金、シングルルームは同4500円)からという、民泊並みの料金を実現した。

「KYOU」を開設したのは民泊事業者やビジネスホテルではない。秋保温泉で最も歴史がある老舗高級旅館のホテル佐勘だ。旅館業にかかわらず、サービス業はすべてハイエンドとローコストに二極分化するといわれているが、ホテル佐勘はその両方の市場を押さえることで安定的な成長を目指している。

老舗高級旅館が新設した民泊並みの低料金宿泊施設「KYOU」(同社ホームページより)

町おこしの一環として「民泊型」の低料金宿泊施設を開設する動きもある。世界遺産の石見銀山に近い温泉津(ゆのつ)温泉(島根県大田市)の古民家を、カフェ・雑貨店・イベントスペース併設の簡易宿所型ゲストハウスに改装した「廻屋(メグルヤ)」がそれ。廻屋には外国人観光客の利用が多く、ローカルの温泉街では貴重なインバウンド需要の受け皿となっている。

温泉津温泉にも旅館街があるが、近年は廃業が相次ぐ。温泉津温泉に限らず、空き家や廃業する旅館を買収して簡易宿所型ゲストハウスとして再利用する「地域おこし型M&A」が注目されている。宿泊業者だけでなく、地方自治体や地域の商工団体、NPOなども簡易宿所型ゲストハウスの担い手になりそうだ。