【中小企業のM&A】建設・小売り・産業廃棄物処理のM&A、各業界の特徴と留意点は?

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写真と本文は関係ありません。

最近の中小企業M&Aの中で、成約が多い業種についてM&Aを進めていく時の特徴や留意点について述べてみたいと思います。

建設業

ポイント①:会計処理方法
    
②:建設業許可

建設業は元請となる大手の建設企業から、下請となる中小零細の工事企業まで様々な企業が含まれます。一つの工事に多数の企業が関与することも建設業の特徴の一つです。そして、多数の企業が関与するため、スケジュールの管理や予算の管理が難しいとも言えます。

 また、工事が長期にわたることも特徴の一つです。一般的な商品・製品であれば、商品・製品の引渡しと対価であるお金、または売上債権の受取は同時に行われます。建設業の場合は工事が長期間にわたること、受注額が多額である性質から、数回に分けてお金が支払われることが一般的です。

支払金額やタイミングは個別の契約ごとに異なりますが、契約、中間、引渡の3回程度とされることが多いようです。建設業は工事の管理の難しさ、経営審査事項という決算数値を含めた点数が求められること、会計処理の複雑さなどにより、会計操作が行われる可能性が他の業種と比べて高いものと思います。

M&Aを検討する場合には、これらの点を留意して、「決算数値の正確さ」を公認会計士など専門家を用いて調査することをお勧めします。

最後に、建設業許可の注意点について述べます。M&Aで会社を買収したとしても「経営業務の管理責任者要件」を満たさなければ許可を引き継ぐことができません。これは取締役のいずれかが該当しなければならない要件です。買収サイドで適任者を用意できない場合は当然ながら取締役に要件を満たす売却側の旧役員を残す必要が出てきますので注意が必要です。

小売業

ポイント①:在庫管理
    ②:店舗別損益

小売業は、最終顧客に商品を販売する業種です。BtoBの業種と比較すると小売業を含むBtoCの業種は、販売先(顧客)の数が非常に多くなります。そのため、顧客ごとの売上高・利益率等を把握して分析することはせず、客数・客単価などをKPI(重要業績評価指標)として設定し、分析することが小売業の特徴の1つとなります。

また、小売業でも特に生鮮食品など、商品の劣化により販売できる期間が短い商品を扱っている場合は、廃棄ロスの管理が重要です。中小企業では廃棄ロスの管理を行っていない企業も少なくありません。廃棄ロス率が10~20%であることも珍しくありまあせん。

廃棄ロスをゼロにするのが良いかどうかは経営判断となりますが、この数値には絶対注意が必要です。M&Aの対象会社が廃棄ロスを管理していない場合や、廃棄ロスが多い場合には、貸借対照表に計上されている棚卸資産について全額資産性があるかどうかの検討が必要となります。

また、買収後は廃棄ロス率の削減などの改善施策を行う必要もあります。小売業のM&Aを検討する場合は、まずは店舗別損益をどのレベルまで把握できるかを確認しましょう。損益が把握できていない場合には、資料を入手して店舗別損益を作成・分析する必要があります。また、KPIの分析状況、運転資金の状況、キャッシュレス化での影響、仕入先との契約関係などを把握した上でM&Aに臨むことをお勧めします。

産業廃棄物処理業

ポイント①:設備
    ②:人材

産業廃棄物処理業は、大きく「収集運搬業」、「中間処理業」、「最終処分業」に分けられ、各業態でも例えば収集運搬業は、運搬する廃棄物の種類によって細かく細分化されます。一般家庭ゴミの収集運搬にしても、生ゴミ(可燃ゴミ)・プラスチック包装容器・缶瓶ペットボトル・紙・布・粗大ゴミと収集運搬業者はそれぞれ違います。

M&Aを検討する場合には、対象企業の産業廃棄物処理業が「収集運搬業」なのか、「中間処理業」なのか、「最終処分業」なのかをまず把握しましょう。一般的に「収集運搬業」よりも「中間処理」や「最終処分」業者の方が設備や埋め立てのための土地などを保有することから規模が大きく、参入障壁が高いことから利益率は高くなる傾向にあることもポイントの一つです。

この業種のM&Aの特徴・留意点としては「設備」と「人材」、この二つを私はいつも重視するようにしています。しっかりとした従業員教育を施しているか否か。あるいは、買収後にバイサイドで従業員教育を行うノウハウがあるのか。従業員の定着がアフターM&A成功の鍵を握っていると言っても過言ではない業種です。買収前の労務DD(デューデリジェンス)もより丁寧に実施されることをお勧めします。

コロナの長期化は後継者不在企業にとって譲渡を決断するトリガー(引き金)の一つに確実になってきています。買収する側としてはこれを「好機」として同業、異業にかかわらずポイントを押さえたDDを行い、自社の業績進展に寄与するM&Aを成約させていただきたいと思います。

文:Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー)

M&A Online編集部

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