事業承継については、慎重な取り組みが求められます。なぜなら事業承継の失敗は会社の存続問題につながるからです。技術論としての事業承継とは「お金」の話しが中心となります。大多数が最初にして最後の事業承継。過去の経験から多い質問についてQ&A方式でお答えしてみます。 

自社の株価をどうやって知る?

Q:自社の株価を簡単に知る方法を教えてください。 
A:基本的な評価方法である「純資産価格法」を紹介します。

1.直近の貸借対照表を用意します。
2.貸借対照表の純資産の部の金額を書き出して下さい(a)
3.貸借対照表に計上されている「土地」、「建物」の合計金額を書き出して下さい(b)
4.「土地」の路線価を調べて下さい(国税庁のHPに公開されています)
5.調べた路線価に土地の面積(㎡)をかけて下さい(c)
6.「建物」の固定資産税評価額を調べて下さい(d)(毎年4月頃に市町村から送られてくる書類です)

 1株あたりの株価={(a)-(b)+(c)+(d)}÷発行済み株式数

これは、あくまで概算です。ご自身で検討する際、ある程度の目安にはなります。もちろん最終的には必ず第三者の専門家に評価してもらって下さい。

Q:自社の株式を売却するときにかかる税金について教えて下さい。
A:所得税と住民税がかかります。

例)資本金1,000万円(株式数200株)を1株20万円で売却した場合

株式譲渡益=売却価格 –(取得費+売却にかかる手数料)

①オーナー会社の場合、通常であれば取得費は自分が出資した金額であるため、資本金と同額であるはずです。本ケースの場合は1,000万円。手数料がないとした場合の譲渡益は下記の通りです。

200株×@20万円(売却価格)-1,000万円(取得費)=3,000万円(譲渡益)

②次に売却益にかかる税率です。今回は復興特別所得税等を除いて考えますので、所得税15%と住民税5%が課税されます。

3,000万円(譲渡益)×(所得税15%+住民税5%)=600万円(所得税450万円、住民税150万円) 

ちなみに所得税は翌年の3月15日が納付期限です。また、住民税は申告した年の6月くらいから何期かに分けて納付することになるので注意が必要です(地方公共団体によって異なるケースもあります)。 

「資金」面のハードルをどう克服する?

Q:会社いる人物に会社を譲渡したいのですが、彼個人では買い取るお金がありません。
A:3つの解決策を紹介します。

1.会社から後継者が借入して売買代金にあてる
2.前オーナー個人から借入して売買代金にあてるMBO(経営陣による買収)の手法を使って資金調達を行う
3.いったん後継者に対して貸付を行い、そのキャッシュを使ってオーナーから株式を買い取る方法です。後継者はその後会社に対して返済義務を負いますので役員報酬が返済原資となります。

仕組みは1.と同じです。もし、前オーナーが亡くなった場合は、その相続人に対して返済していくことになります。1.あるいは2.の場合、どちらにしても後々のトラブルを防止するためにも書面による証拠を残しておくことが重要です。

主に金融機関が後継者のスポンサーとなって、オーナー社長から株式を取得し、経営者に後継者を据えるという方法です。スポンサーは投資に対する金利相当分として配当を求めてくるケースもありますし、将来的には株式上場やM&Aによる売却、資金回収を目指すこととなります。

とかく面倒な名義株の扱いにどう対処?

Q:先代から譲り受けた会社の売却を検討していますが、名義株があります。問題だと言われるのですが、どうすればいいのでしょうか? 
A:まずは、①書面の取得、次に②買い戻しを検討して下さい。

社歴が長い会社によくある問題です。名義人が前社長の知人である場合が多いのが特徴です。「現在の株主としての地位は単なる名義人であり、実質的な所有者は前社長である」という趣旨を書いた書面を必ず残すようにして下さい。この書面には

1.名義人の住所・氏名・印鑑
2.名義人として引き受けた株数
3.実質所有者の住所・氏名
4.名義株を引き受けた年月日(わかれば)

を記載しておくとよいと思います。

仮にこれが相手から取得できないとなるとトラブルに発展する可能性が高くなりますので弁護士ら専門家に相談することが賢明です。ただし、「実質的な株主は誰か」を証明するために下記の資料を一つでも多く揃えておくことが必要です。

Ø  法人税別表2の株主の氏名・住所の変更(税務署から問い合わせがくる可能性もあり)
Ø  会社の株主名簿の変更
Ø  配当を実質的な株主に支払い(配当の支払い調書)、その人は個人の確定申告を行う

金言は「備えあれば患いなし」

 「多い質問=誰しもが未対応」。事業承継も「備えあれば患いなし」です。イベントが発生してからの対応より、事前に用意しておく方が費用も必ず安くすみます。

今のご時世、商工会議所など公的機関も事業承継に関する専門家を紹介してくれることでしょう。まずは、早めの相談をお勧めします。

文・Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー)