M&Aによって事業を売却すると、一般的には大きな資金が入金になるだろう。この資金をもとに悠々自適なセカンドライフを送ろうと考えている経営者も多いだろう。もちろん、M&Aの売却資金で悠々自適なセカンドライフを送ることに何か問題があるわけではない。

しかし、この記事を読んでいる方の多くは多額の資金を残して万が一のことがあると多額の相続税がかかってしまうことをご存知だろう。

多くの経営者にとって相続は頭の痛い問題であると思うが、特に子供なしの夫婦の場合、相続対策に注意が必要なことを皆さんご存知だろうか。

子供がいる夫婦の場合と異なり、子供なし夫婦の場合、遺言を作成しておかないと相続が発生した時に想定外の事態になる可能性が高いのだ。そこで、今回は子なし夫婦の相続の注意点についてわかりやすく説明する。

子供がいない場合、被相続人 の兄弟や姪・甥にも権利が発生

子供がいる場合は、配偶者と子供に被相続人のすべての遺産を遺すことができる。しかし、子供がいない場合、配偶者とその他の親族が法定相続人になることを皆さんはご存知だろうか。

相続人にパターン別で見る法定相続分は以下のようになる。
・配偶者と直系尊属(父母など):配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1
・配偶者と兄弟姉妹:配偶者が4分の3、 兄弟姉妹が4分の1((兄弟姉妹が複数人いる場合、4分の1を均分する)

このように、子供がいない夫婦の場合で直系尊属や兄弟姉妹がいる場合は、 配偶者にすべての資産を渡すことができないのだ。

父母ともめるケースは少ないかもしれないが、兄弟姉妹の場合だと長く疎遠になっているケースも多いだろう。そのような場合、遺産配分をでもめることは容易に想像できると思う。

また兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、代襲相続という形になるので兄弟姉妹の子供が相続を受ける権利があるのだ。

兄弟姉妹でも、もめる可能性があるのに兄弟姉妹の子供と遺産を配分するとなるともめる可能性はかなり高くなってしまうのではないだろうか。

長年連れ添った配偶者に遺産の大部分を渡したいと思う方が圧倒的に多い中、相続の準備をしておかないと自分の希望通りに遺産を配分することはできなくなってしまう。このようなケースを防ぐためにおすすめなのが、ズバリ遺言を生前に作っておくことなのだ。

遺言を作成すれば、残された配偶者に大部分渡せる

相続には法定相続分以外に遺留分というものがある。遺留分とは、相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた制度のことだ。兄弟姉妹にはこの遺留分はないが、ほかの相続人は一定の遺留分が設けられている。

たとえば、配偶者と直系尊属(父母)の場合、父母の遺留分は、遺産の6分の1になる。法定相続分だと遺産の3分の1を受ける権利があるが遺留分は6分の1なのだ。

また先ほど説明したとおり兄弟姉妹には遺留分はない。つまり遺言を作成しておけば、子供がいない夫婦の場合でも遺産の大部分を配偶者に残すことができる。

子なし夫婦の場合、事前に遺言を作成していないと、万がーのことが起きた時に配偶者は思っていた金額を受け取ることができないという事態が発生するので注意するようにしていただきたい。

最後に自筆遺言と公正証書遺言の違いについて明記しておくので遺言を作成するときの参考にしてほしい。

自筆遺言と公正証書遺言の違い

遺言は大きく分けると自筆遺言と公正証書遺言に分けることができる。それぞれのメリット・デメリットは以下のようになる。

自筆遺言のメリット
・証人の立会いが不要
・遺言を秘密で作成できる
・費用がかからない

自筆遺言のデメリット
・紛失、偽造の可能性(2020年7月10日以降は法務省で預かってくれる制度が開始)
・要式が間違っていると無効になる
・検証手続きが必要

公正証書遺言のメリット
・証拠能力が高い
・偽造の可能性がない
・検証手続きは不要

公正証書遺言のデメリット
・作成手順が複雑
・証人がいる
・費用がかかる

このように自筆遺言と公正証書遺言にはさまざまなメリット・デメリットがあることがわかる。それぞれに一長一短があるがやはり無効になる可能性や偽造の可能性があることを考えると公正証書遺言にしておいたほうが安心だといえるだろう。

文:M&A Online編集部