地方銀行、信用金庫、信用組合は中小企業を支援する、いわば応援団。事業承継問題についても最初に相談を受けるのはこの金融機関の支店の方たちであることが実は多いのです。

支店の人は日々のルーティン業務が忙しく事業承継などのコンサルティング業務には手が回らない、というのが実態かもしれませんが、これから述べることに留意しながら営業活動をしていればお客様に喜ばれ、行内での表彰も夢ではないかもしれませんよ⁉

お客様からM&Aのニーズを聞いたら

上司に口頭でいいのですぐに報告して下さい。売りでも買いでも。そして次回訪問時は上司に帯同してもらいましょう。それだけでお客様は「ちゃんと伝わっているんだな」と思ってくれます。営業日誌がどうのとか、次回訪問した時に買い(売り)ニーズを把握してから、とかはNGです。

なかなか相手(反対ニーズ)の案件は出てきませんから、だからこそお客様に対するファーストリアクションだけは早めにしておくべきです。

売主・買主のメリットを覚える

下記については業種にかかわらず共通なので機械的に覚えておいて下さい。そして、お客様との世間話の中でM&Aの話題が出たら、まずはこの4つの話をして下さい。

(売主のメリット)
・M&A以外の方法で社長が大きな金銭メリットを享受することは不可能である。
・借り入れの個人保証や担保から解放される。

(買主のメリット)
・事業を育てるための時間と労力を省くことができる。
・小さいリスクで新規事業に進出することができる。

売却案件の発掘方法とは

下記条件で行内システムを検索してみて下さい。きっとたくさんの売却候補先に出会えることでしょう。

①経営者の年齢が65歳以上
②(借入金総額-現預金残高)が営業利益の5倍以上
③経営者の名前と筆頭株主の名前が一致しない
④営業赤字が2年以上続いている

銀行員は一般企業が入手困難な上記のような企業情報を決算書などを通じていつでも確認することができます。自分たちはM&Aにおいて非常に優位であるということを再認識し、案件発掘に活用してみて下さい。

M&Aの取引価格の考え方について知っておく

計算方法については今回は割愛しますが、「M&Aの取引価格は買主が決める」ということは覚えておいて下さい。よくある初歩的なミスとして、売主と売却価格について時間をかけて話し合うケース。売主に期待させるだけで結果が伴わないことが多いです。

また、金融機関によっては「株価サービス」のようなものを提供してM&Aに興味を持ってもらうように仕向けている動きもありますが、大半が参考株価なるものを顧客に提供することで満足してしまっている、というのが実態ではないでしょうか。これでは意味がありませんよね。

ゆくゆくは自身の「ストロングポイント」に

最後に純預金先へのアプローチツールとしての、M&Aの活用を記しておきます。銀行員は融資のない顧客のところへはなかなか訪問しません(できません?)。こうした会社の社長様は税理士や会計士と事業承継について話し合っていることが多いです。

ところが、税理士や会計士の本音としては親族内承継ならまだしも、売却の相談をされても自分たちにとって不利となる(顧問先が減る)話にはなかなか取り組みづらいバイアスがかかるものです。

借入のない会社ですから業績もよく、M&Aの取引金額も大きくなるでしょう。また、こうした会社の場合は、親族内承継となった場合でも十中八九相続問題を含んでいますので資産運用を含めた手数料獲得のチャンスとなり得ることも付け加えておきます。

某テレビドラマのようにドロドロとした銀行内の利権が絡んだM&Aも、見る分には面白いのかもしれません。しかし、地域金融機関のみなさまには、取引先企業の社長様のよき相談相手となって、事業承継型M&Aでの成功体験を積み重ね、いずれは自分の仕事における「ストロングポイント」にしてほしいと願っています。

文:Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー)