M&Aのマーケットにもいろいろな専門家がいる。最近は「M&Aコンサルタント」の名刺もよく見かけるようになりました。これからM&Aや事業承継を商いとしたい、と思っている方や実はまだあまりディールにタッチしたこがない方必須‼  よくあるミス、トラブルについて書いてみたいと思います。 

【建設業の経管(経営業務の管理責任者)】前もって確認を

この題名を見ただけで「ピン!」ときたあなたはM&Aアドバイザー中級以上です(笑)。「んっ、どうゆうこと?」と思われた方が7~8割なのではないでしょうか。

許可を持つ建設業の役員が退任する場合にはこれが100%問題になります。建設業法7条第1号において、「許可を受けようとする者が法人である場合はその役員のうち常勤であるものの1人が許可を受けようとしている建設業に関し5年以上の『経営業務の管理責任者』としての経験を有すること」と書かれているのです。

つまり、M&Aで会社を買うこととは別に、今まで通りに事業そのものを継続していくための条件(要件)が付されているのです。こうした規制は、ペーパーカンパニーや不適格業者を排除することが本来の目的なのですが、中小企業M&Aの場合における「経管」の問題は、売り手の社長のみが「経管」であるケースが大半であり、買い手が「経管」を送りこめない場合はディールが成立しないリスクがあるのです。

仮に強引に話を前に続けてみたとしても「経管」問題がクリアできないとなると、今度は役員退職慰労金をいつ、どうやって払うのか、という問題も発生してきます。つまり、売り手が引退できなくなるのです。対象会社が建設業許可を持っている場合には絶対に前もって確認が必要な項目です。

【保証協会付融資の個人保証】いったん全額決済

中小企業M&Aで、連帯保証人の解除は重要な問題です。信用保証協会を介さないプロパー融資の場合は連帯保証人の「切り替え」は可能な場合が多いのに対し、保証協会付融資の場合はいったん全額決済を求められます。

これは、法人が保証協会付融資の連帯保証人になることが原則認められていないことに加え、現連帯保証人である前経営者が会社の事業に一切関与してないことなどの条件が整ったうえで連帯保証契約の解除が検討されている事情が背景にあるのだと思います。

ただし、2018年頃から「経営者保証に関するガイドライン」の趣旨を踏まえ、個人保証を不要とする取り扱いも見られるようになりました。中小企業は保証協会付融資を利用している先が多く、個人保証の取り扱いには注意が必要です。M&Aを機に個人保証をどのように対応していくのかは、アドバイザーや仲介者の腕の見せ所になってくると私は思います。

【譲渡価額の変更】覚書などに印紙の貼付が必要

M&Aは株式譲渡のケースが多く、事業譲渡になると不慣れなためかミスが発生しやすい。最も多いのが事業譲渡における譲渡価額の変更。事業譲渡契約は課税文書であるため、譲渡価額の変更は「契約金額の変更」となります。つまり、変更を行った際に交わす覚書などにも譲渡価額の増減に応じた印紙の貼付が必要となるのです。

よく見かけるのが元の事業譲渡契約書に追加で印紙を貼付しているケース。これは間違いです。

さらに、「元の契約金額」>「変更金額」の場合は、契約金額のない文書として扱われるため、200円の印紙を覚書などに貼付しなければならないことを忘れてはいけません。譲渡価額の変更はデューデリジェンス(資産査定)の結果次第でやむを得ないケースもありますが、中小企業M&Aにおいてはできるだけ基本合意書を交わすまでに金額変更が起こらないように固めておくことが理想です。

文:Antribe社長・小林伸行(M&Aアドバイザー)