経営者の高齢化のみならず、コロナによる業績不振も相まって将来展望も明るくない、しかも第三者へ売却しようにも借金が多すぎる、など中小企業経営者を悩ますケースが頻発している昨今。「いっそのこと廃業しようか…」という考えに至ることもあるのだろうと推測します。 

債務超過だと法的手続きが必要に

1.廃業の方法

会社が資産超過なら通常清算が可能なはずです。問題なのは債務超過のケース。基本的には何らかの法的手続きを含めた対策が必要となってきます。

資産超過 →通常清算 裁判所への届け出は不要
債務超過 →特別清算 裁判所が清算手続きを監督する
 〃→破産手続き 会社自らまたは当該会社の債権者が裁判所に申し立て

2.通常清算時の注意点

①取引先関係
段階的に取引関係を清算、終了するように努めることが大切です。日頃気にもしていない契約内容については事前に確認して下さい。解約予告期限や違約金の定めなどで経営者自身も知らなかった思わぬ決まりごとがあるかもしれません。

②賃貸借契約
特に原状回復の範囲、内容については賃借人と再確認して下さい。費用負担に大きく関わってきます。

③金融機関
借り入れがある場合はとにかく早めに返しておきましょう。他にも利用手数料や支払い手数料がある場合は「何日までに解約すれば良いのか」ということを確認しておくべきです。手数料等は1カ月単位のものが多く解約日によっては余計な出費が増えてしまいます。

④従業員
気持ちの問題とお金の問題と両方への対応が社員に対しては必要となってきます。解雇日の30日前予告や有給休暇の消化、退職金の支払いなど、短時間の間にやらなければならないことは意外に多いものです。

3.特別清算の注意点

基本的には、破産手続きよりも債権者にとって利益になるという見込みがある場合に選択される手法であると私は理解しています。破産より簡易・迅速に清算が可能である、否認の手続きや債権調査の手続きがない、といったメリットがあります。

デメリットとしては、申立時の弁護士費用(150万円くらいから)、債権者の事前同意(これがなかったら成立が難しい)などが挙げられます。

そのほかの注意点として、特別清算は株式会社にのみ適用が可能な点について忘れてはいけません。

廃業スキームの「特定調停」とは

4.特定調停スキーム

特定調停は、現在考えられる「廃業支援」スキームの最有力。来年にかけて流行しそうな手法だと個人的には思っていますので興味のある方は勉強しておくことをお勧めします。特別清算との違いを簡単に言うと下記のようになります。

・事業を継続しながら手続きを行うことが可能
・原則、公表されない
・取引先を巻き込まないことが可能(つまり、交渉相手は金融機関のみ)
・株式会社以外の法人も利用可能

どちらにしても、弁護士マターの話しになるので、特定調停の場合でも弁護士費用が数百万円必要にはなりますが、費用対効果で考えると有効な手段になり得るのではないかと個人的には思っています。

アドバイザーであれ仲介であれ、これからは「売れそうにないから放置」ではなく、廃業支援的な発想も必要なスキルの1つになってくるのかもしれません。

例えば、国が税金を投入して「廃業」のお手伝いをするというスキームができ来れば、①第三者承継によるお相手探しと②廃業支援というセットサービスを、本当に困っている中小企業経営者に提供できるのではないでしょうか。

文:Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー)