「ハゲタカ・シリーズ」で知られる経済小説家の真山仁氏が10月29日、都内で開かれた全国事業承継推進会議(中小企業庁、全国商工会青年部連合会など共催)のキックオフイベントで「中小企業の現状と未来」と題して基調講演した。「企業・事業は誰のものか」を会場に問い掛け、中小企業の再生や生き残りにエールを送るとともに、リスクテークに向き合うべき金融機関の姿勢に奮起を促した。

要旨は以下のとおり。

生き残るのは「自分が」「自分で」

「ハゲタカ・シリーズ」には外伝として『スパイラル』という作品がある。東大阪の町工場を再生するという小説で、9月に文庫になった。私自身、どうしたら中小企業が再生できるのか、中小企業の幸せとは何かということについて、4、5年悶絶しながらいろいろ考えた時期があった。

中小企業の現状といえば、大昔から厳しいという言葉しかない。極端にいえば、もし現状がバラ色なら、おそらく世界に羽ばたく大企業がいっぱいないといけない。厳しさの一方で、数では中小企業が圧倒的に多い。

なぜ厳しいのか。一つは下請けが多いこと。どれだけ努力して、良いものやニーズに応えたものを作っても最終的に親企業である発注者の意向に振り回さる。景気が良くなると、目が回るほど忙しくなる。これでは会社が回らないので、第2工場をつくったり、人を新たに入れたりする。ところが、発注者の意向が急に変わって、なかったことにしてくれと言われたりする。景気が良くても悪くても、しわ寄せが中小企業にくる。

いかに自分の事業を自分でコントロールできるかが中小企業にとって最大のテーマだ。しかし、頑張っても、それが実現できないでいるのが現状の厳しさ。経営者の皆さんの胸の真ん中に置いてほしいのは、生き残るのは「自分が」「自分で」ということ。これを絶対に譲らないでいただきたい。

その意味で、あえて政府に申し上げたい。政府はベンチャーを手厚く支援している。中小・零細の範疇でとらえられていないようだが、ベンチャーも中小企業。もう一つ、今、はやっているのがスタートアップ。若い人の起業を支援することは何となく未来が見えて、格好良くすてきに見える。ただ、すてきに見えるものがうまくいったためしは実際そんなにない。