事業承継を行う時にやるべきことの1つに、「後継者教育」があります。後継者を選定し、次世代の経営者として育てることは、経営者の役割であり、事業承継後に会社が存続・成長していくうえで重要です。後継者に選ばれた人は、社内と社外の後継者教育を通じて、経営者として必要な知識や資質を身につけます。
今回は、筆者が講師として実際に係わっている、後継者塾のカリキュラム内容や後継者たちの様子についてお伝えします。
1.後継者塾のカリキュラムとは
筆者が係わっている後継者塾は、主に自治体や公的機関が主催しており、隔週で8~10回のシリーズになっています。1回の講義時間は3~4時間、学習期間は入塾から修了まで約半年です。
1回の講義の進め方は、講師が各テーマに関する経営知識について講義した後、テーマに関する事例を使って、4~5人のグループごとでディスカッションし、ホワイトボードを使って課題を整理しながら演習を進めていきます。最後に各グループが発表して、塾生全員で気づきを共有します。
例えば、標準的な8回シリーズの場合、カリキュラムの内容は次のとおりです。
回 | テーマ | 内容 |
---|---|---|
第1回 | 経営理念 | 経営理念の重要性を学び、自社の歴史や経営理念について考える。 |
第2回 | 経営戦略 | 事例を使って外部環境(機会・脅威)と内部環境(強み・弱み)を分析し、「誰に・何を・どのように」商品やサービスを提供していくのか、企業の向かうべき方向性を考える。 |
第3回 | ビジネスモデル | 事例を使って外部の流通販路と社内の仕事の流れを図式化し、儲かる仕組みを考える。 |
第4回 | 組織 | 組織論の基本知識を学び、事例を使って組織の問題点や課題を発見した後に解決策を考える。 |
第5回 | 労務管理 | 労働法の基本知識を学び、従業員のモチベーションを高めるための目標設定や人事評価の方法を考える。 |
第6回 | 財務会計 | BS・PL・CFの関係性を学び、演習問題を使って資金繰り表を作成する。 |
第7回 | 経営指標と管理会計 | 経営指標(収益性・効率性・安全性)と損益分岐点売上高の計算法を学ぶ。 |
第8回 | 将来の経営ビジョンの発表 | これまで学んだことを自社に置き換えて考え、会社を受け継いだ後に自社が進むべき方向性をプレゼンする。 |
これが10回シリーズになると、経営者としてのコミュニケーション力やリーダーシップの重要性、ITなどの情報管理の活用法、会社法の知識などのカリキュラムが加わります。
後継者塾によっては、毎回宿題の提出があったり、泊まりの合宿を設けたりする場合もあります。