ダイナミクス「鳥二郎」
ダイナミクス「鳥二郎」


業態開発はこだわりを深めて消費者に伝える時代に

鳥貴族の目論見は見事に外れてしまったわけです。状況を打破する施策は鳥貴族に任せるとして、ここでわかるのは値段だけに頼る店舗の危うさです。外食企業の競争力は「価格」×「業態」×「立地」にあります。鳥貴族は280円均一で、焼き鳥を主軸とし、関東・関西・東海の2等地雑居ビルに出店する戦略をとりました。安さと焼き鳥へのこだわりを武器とし、2等地のビルに入居することで出店コストを下げることに成功したのです。

2等地への出店という不利な状況であっても、280円均一という価格設定にしたことで学生層を引き込むことに成功しました。若者はWebで店舗を探すことに慣れています。駅前の目立つ店にふらっと来店するよりも、スマートフォンで目的に沿った店舗を探すようになっていたのです。280円均一、お金のない若者、スマートフォン検索。鳥貴族の戦略が時代にはまったのでした。

鳥貴族は焼き鳥にこだわっていたこともポイントでした。価格の割に料理がおいしいというイメージを作り、30~40代の会社員を引き込むことにも成功したのです。9坪ほどのお店から始まった鳥貴族は、一部上場企業にまで成長しました。

しかし、競争の激しい飲食業界。当然、鳥貴族をベンチマークする店舗が現れます。”オマージュ”しているとよく言われるのは、ダイナミクスの「鳥二郎(270円均一)」、コロワイドの「やきとりセンター(全品399円以下)」、モンテローザの「豊後高田どり酒場(280円均一)」です。看板やロゴデザインが非常に良く似ており、どの店舗も焼き鳥業態であること、そして安さを追求しています。一部店舗は、鳥貴族と同ビルに出店したりもします。

今回鳥貴族は値上げをしたことで、既存客を他店へと逃がすことになりました。消費者からすれば、「鳥貴族値上げするってよ。そしたら、隣にあった似たような店に行ってみようぜ」となったことも十分考えられます。

店舗拡大に注力した鳥貴族は、重大な間違いを犯していました。業態の深みを消費者に伝えることを怠ったのです。同社の焼き鳥は他社と異なり、国産鶏に限定して仕入れを行っています。セントラルキッチンで加工するのが主流の中、店舗での串打ちにもこだわっています。タレも外部業者のものをそのまま使うのではなく、自社開発。焼き鳥の旨味を最大限に引き出す努力を行っているのです。夜の仕事に集中するため、ランチ営業も行っていません。業態力で充分に他店との差別化ができているのです。

鳥貴族は業態へのこだわりを上手く伝えることができませんでした。値上げを行う段階で、大々的にそこを宣伝することもできたはず。そこを怠ったことも今回の大惨事を招いた可能性は高いです。これからの時代、新規客と固定客を取り込むために必要なこと。それは業態を深めてこだわり、それを消費者に徹底的に届けることになりそうです。それを鳥貴族が身をもって教えてくれているようにも見えます。

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