積極的なM&Aで調剤薬局事業を拡大中のソフィアホールディングス(HD)は、来年1月1日付で予定していた「なのはな」(宮城県塩竃市)が運営する調剤薬局3店舗の買収を取りやめると発表した。ソフィアHDは今年に入って調剤薬局で8件のM&Aを公表したが、このうち今回のケースを含めて2件が中止に追い込まれる異例の事態となった。

「相手側の譲渡の体制が整わず…」

ソフィアHDが、なのはなの調剤薬局事業の買収計画を発表したのは11月21日。宮城県多賀城市の2店舗と同岩沼市の1店舗の合計3店舗を3億1000万円で取得する内容で、翌11月22日に最終契約の締結、年明け1月1日にクロージング(契約実行日)というスケジュールだった。

ところが、相手側の譲渡の体制が整わず、予定期日を過ぎても事業譲渡契約の締結にいたらなかったという。その後も協議を重ねたが合意に達しなかったことから、約2週間後の12月6日に取締役会で買収中止を決めた。

元々、事業買収を対外発表した翌日に最終契約を予定していたので、わずか1日のうちに事態が急変したことになる。中止理由にある「相手側の譲渡の体制が整わず」を額面どおりに受け取れば、相手側企業の株主・役員の意見の不一致や従業員の反発などがあったことも考えられるが、真相はやぶの中だ。

今年1月に続き、「中止」が再び発生

実は、ソフィアHDは今年1月にも山口県宇部市にある調剤薬局の子会社化を基本合意の発表から1週間で中止した経験がある。この時は、最終契約締結を前に、相手側に重大な表明保証違反に該当する事項が確認されたことが理由だった。

表明保証とは、売り手が買い手に対して、契約締結時点における対象企業の財務や法務など一定の事項について事実を表明し保証する条項のこと。デューデリジェンス資産査定)だけでは完全に把握しきれないリスクの発生に備える狙いがある。違反があれば、買収の基本合意を解消、場合によっては損害賠償請求に発展する。 

 実際、いったん買収で基本合意しながら、その後の条件交渉でM&Aが中止となるケースは少なくない。東証適時開示情報を集計したところ、今年のM&A件数は12月初旬時点で約770件(経営権の異動を伴うもの。グループ内再編は除く)で、このうち子会社化や事業取得を発表後に中止となった案件は少なくとも11件。しかし、1社で複数の案件を中止したのはソフィアHDだけだ。

M&Aの計画中止という事態となれば、買い手側よりも、むしろ売り手側の方が社内の混乱や風評被害の懸念などダメージが大きいだけに、交渉では細心の対応が求められるのは言うまでもない。

昨年来、調剤薬局で15件のM&A

同社はインターネット関連事業を主力とするが、調剤薬局事業を新たな経営の柱に育てるため、M&Aを活発化。2018年の9件に続き、2019年もここまで中止2件を含めて8件の買収に取り組んでいる。

今年夏にグループ入りした調剤薬局(東京都世田谷区)

現在、グループの調剤薬局数は60近くを数え、地区も東北から九州に広がる。2019年9月中間決算の売上高42億8500万円のうち、調剤薬局部門は24億円と半分を超える。

◎ソフィアHDが今年発表した調剤薬局の買収案件(カッコ内は買収金額)

11月なのはな(宮城県塩竃市)の調剤薬局3店舗を取得(3.1億円)→中止
9月メリーコーポレーション(茨城県日立市、2店舗)を子会社化(3億円)
メディプラン(大阪市)の調剤薬局3店舗を取得(2.3億円)
7月盛徳商事(東京都世田谷区、3店舗)を子会社化(9200万円)
5月アルファメディックス(神戸市、6店舗)を子会社化(9160万円)
2月コンビメディカル(岐阜県各務原市、3店舗)を子会社化(4.2億円)
1月泉州薬局(大阪府岸和田市、7店舗)を子会社化(10.1億円)
エイエムファーマ(山口県宇部市、1店舗)を子会社化(2.1億円)→中止


文:M&A Online編集部