【解説】東洋建設のTOB攻防戦 買収提案と防衛策の動向

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4.本防衛策の内容

本買収防衛策は特定標的型買収防衛策であり、平時導入型のように株主総会での承認を存続の条件としていることを除けばこれまでの基本的枠組みを踏襲しているように思われる。

他方で、本買収防衛策は「合同会社 Vpg らないしダブリューケイ・ワン・リミテッド(WK 1 Limited)らによる当社株式を対象とする大規模買付行為等が行われる具体的な懸念があることに基づく当社の会社の支配に関する基本方針及び当社株式の大規模買付行為等への対応方針(Vpg らによる当社株式の公開買付け申込みに関する協議を強圧性のない状況下で真摯に行うための環境確保のための方策)」と称し、「買収防衛策」という呼称が付けられていない。

これは、本買収防衛策の位置づけを「当社株式のTOBの実施を妨げることを第一義的な目的とする」「平時に導入される一般的な『買収防衛策』」ではなく、「企業価値最大化のための『対等な交渉力』を確保するスキーム」、すなわち「株主の皆様が適切なご判断を行うための適切な情報と時間を確保し、Vpgらによる当社株式の公開買付け申込みに関する協議を強圧性のない状況下で真摯に行うための環境確保のための方策」(本買収防衛策補足資料2頁)と位置づけているためと思われる。

もっとも、平時導入型か有事導入型かを問わず、ほとんどの買収防衛策は情報と大規模買付者との協議のための時間を確保することを主たる目的として表明しているのであり、対抗措置の発動はその実効性を担保する手段に過ぎないから、買収防衛策という呼称を避けたのは導入・対抗措置発動議案について支持を得なければならない機関投資家を含む株主への配慮に基づくものではないか。

なお、「TOBの実施を妨げる」という目的ではなく「情報と時間の確保」という目的「だけ」に徹するというのであれば、(i)大規模買付ルール違反時の場合のみ対抗措置の発動ができるものとし、大規模買付ルール遵守の場合には対抗措置を発動しないこととするか、又は(ii)大規模買付ルールを遵守した場合でも一定の発動事由があれば発動できるとしても、いわゆるニッポン放送事件判決4類型のような強圧性の極めて強い大規模買付行為のみに限定する、という設計をとることもありえたところであろう。

しかし、本買収防衛策の発動事由は、「大規模買付者を含む特定株主グループの当社の経営方針及び事業計画等が、当社グループのサービスの安定供給に支障を来たし、当社グループの顧客の利益に重大かつ深刻な影響が及ぶことが想定され、その結果として、当社が・・・当社の経営理念を果たせなくなると判断される場合」を含むなど、広範かつ網羅的な内容となっており、経営陣が望ましくないと判断した大規模買付者への対抗措置の発動も予定した、「情報と時間の確保」という目的に留まらないものとなっている。

柴田 堅太郎 (しばた・けんたろう)

所属弁護士会
第一東京弁護士会・2001年登録(司法修習54期)
ニューヨーク州弁護士・2007年登録

取扱分野
M&A、組織再編、ジョイントベンチャー、ベンチャーファイナンス、コーポレートガバナンス、 敵対的買収防衛、株主総会指導、企業の支配権獲得紛争などのコーポレート案件、コンプライアンス、労務問題、企業法務全般

柴田・鈴木・中田法律事務所 HP
http://www.ssn-law.jp/


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